待機児童の保護者が保育園増設を求めて自治体に異議申し立てをする、いわゆる「保育園一揆」を全国に先駆けて杉並区で行った曽山恵理子さん(37歳)。曽山さんは、いわば働く親のフロントランナーと言えます。「ジャンヌ・ダルク」のように崇められたり、「すご過ぎる」と敬遠されることも多いそうですが、実際に会って話をしてみると曽山さんはフツーの「働くお母さん」。彼女が大事にしていたのは、社会を変えるとか、日本を変えるといった「大きな物語」ではなく、可愛い子どもと共に暮らしながら仕事をしたいという、ごくごく当たり前の希望をかなえるための「地道な行動」でした。前回記事の「杉並発・保活革命を率いた“ジャンヌ・ダルク”」に引き続き、これから一緒に、曽山さんの生の声を聞いていきましょう。

治部 杉並区の待機児童問題や子育て政策に関わる前から、社会問題に関心をお持ちでしたか。それとも、あくまで普通の生活を送っていらっしゃいましたか。

「フツーのワーママ」の心に火が付いた瞬間

曽山さん(以下、敬称略) まさに後者です。待機児童問題が社会問題であることも意識しておらず、むしろ「周りの人達が困っているから相談に乗っているだけ」くらいの意識でした。

 ただ、待機児童問題に悩む人は多く、自分の保活も不安だったので、「これは何とかできないものか?」と。ニュースで私達の活動が報道される半年ほど前から個人でママ友を集めて勉強会を開いたり、先輩ママとの交流のための「保育園情報交流ランチ会」を開いたりしていました。

 認可保育園設置のための署名活動をやっていた代表の方から「現役世代に待機児童問題をもっと広めてほしい」と言われたこと。そして、2013年1月の入園申し込み状況を見て「これはもう放っておけない」と感じ、一人勝手に使命感を抱き、行政に対して声を上げることにしました。