「そういう意見もあるんだ」と聞き流しておけばいい

──ただ、最近は働く女性が増えていますが、親の世代はまだ母親は専業主婦だった家庭が多いと思います。「女性は家庭に入るべき」という考えを持っている親も少なくないのではないでしょうか?

 私は働くことを選択したわけだけど、外で働くお母さんと、家庭にいるお母さんとどっちが良い、悪いではない。本人がしたいようにすればいいの。母親になったって、人間であることは変わらないでしょう。自分の考えに従い、一人の人間として、選択すればいい。

 今は情報が多くて、色々な人が色々なことを言う。理想っぽいことを掲げる人もたくさんいるから、子どもを産む前から身構えてしまっている女性も多いと思う。上の世代の人は特に、自分も経験したことだから一家言ある。そんな意見に対してはありがたく頂戴するように見せて、「そういう考えもあるんだな」と聞き流しておけばいいのよ(笑)。

──中川さんも聞き流していたんですか?

 もちろん。私も都合のいい意見だけ自分の耳に入れていた(笑)。

 それに、専業主婦のお母さん全員が、24時間子どもと一緒にいるわけではないでしょう。24時間子どもとべったり過ごすことが子どもにとって100%良いかは分からない。子育てに、「こうしたからこうなった」なんていうはっきりした因果関係はないと思うんです。

子どもを丈夫にするには親も健康じゃないと

──働く女性の先輩として、中川さんが子育てで気を付けていたことを聞かせてください。

 具体的なアドバイスをするとしたら「子どもの身体を丈夫にしておくこと」。これに限るわね。子どもの体調が悪いと親がそばにいてあげないとかわいそうだし、お母さんもなかなか仕事に集中できないでしょう。

 子育てで大事な3つは、「睡眠」「食事」「排せつ」。この3つのリズムを何があっても崩さないこと。基本的なことだからこそ、子どもの健康にもすごく影響します。気をつけるのは子どもの健康だけじゃないわよ。自分の健康も大切。丈夫な子どもにするためには、親も健康じゃないといけませんから。どちらかに無理がかからないように、夫婦で協力し合うこと。

 家事において私が全責任を担っていたのは食事でした。その他の子どものことや、掃除、洗濯は夫(画家の中川宗弥氏)もやっていました。おむつ替えなんて夫のほうが上手だったぐらい(笑)。子育ては男性も一緒にするものでしょう。

 保育園までの通勤時間がもったいないからと、職場(みどり保育園)の近くに引っ越しして、夫は引っ越した先の場所で自分のアトリエを借りてうまくやっていましたよ。夫と協力して、子どもと自分にとっていい方法を探っていけばいいんです。

(取材・文/平山ゆりの)