『だれも教えてくれなかった ほんとうは楽しい仕事&子育て両立ガイド』の共著者で、夜間保育&学童保育所を運営する認定NPO法人あっとほーむ代表の小栗ショウコさんと、松蔭大学・経営文化学部准教授の田中聖華さんに、仕事と育児の両立について聞きます。

 いざ出産するとなると、どうしても仕事を中断しなくてはならない期間が発生します。いわゆる産前休暇と育児休暇については取得しなくてもやっていける人は、働き続けてもいいのですが、産後休暇の8週間(医師の診断によっては6週間)については、母体保護のため休まなくてはなりません。

 とはいうものの、初めての出産の場合、子育ても復帰へ向けての準備も何もかもが初めてですから、何が起こるか分かりません。育児休業法が整備されてきた今、仕事上の都合がつけば育休を取ることができる状況にあれば、取得したいと思う人が多いでしょう。

 また、育休明けに仕事に復帰したとしても、産前と全く同じように働けるとは限りません。子育て時間を確保できる仕組み(短時間勤務制度の利用、残業や出張の無い業務への異動など)を利用しなければならない場合のほうが多くなるかもしれません。

 そうした場合、一番気になるのは、キャリアの維持、継続、自身の成長のことではないでしょうか。仕事が好きで働き続けたいと思うならなおさらのこと、周りの人より短い時間しか働けない、自分が納得する成果を出せるだけの時間的余裕が無いことへのジレンマを抱えて、これまで通りの仕事の仕方や内容では、続けられなくなるのではないかと不安になっていませんか。「キャリアを中断したくない!」と思っていませんか。

子育てにより仕事への制約が生まれる期間は限られている

 でも、ここは冷静になって。長い人生の間で、子育て中なのはほんの限られた期間だけです。頼れる実家が近くに無くても、現在ではその気になれば様々な支援を受けることができます。経済的負担もある程度増えるけれど、キャリアを諦めず仕事を続けたいと思えば、支援者を探してできる方法はたくさんあります。

 出産直後からできるだけ早く仕事に復帰する人もいる一方で、一時的に仕事の場を離れる決断をする人もいます。いつも仕事の現場に戻ることを忘れずに意識していれば、子育てしている間にも、仕事を再開するための準備に抵抗や不安が少なくて済みます。

 ある女性は、出産を機にそれまで勤めていた銀行を辞めましたが、自分が35歳になるまでには、必ず何らかの仕事に復帰しようと決めていました。だから彼女は、出産後もすぐに自分には何ができるか、どんなことをやりたいかを探し続けられたし、それを見つけた後は、その仕事に必要な資格を在宅で通信教育を受けながら取得しました。