「子育て」だけでも大変そうなのに、これに加えて「仕事」なんて……

 自分一人なら、自分のペースでやろうと思えば何事もできるし、またどうにかうまくできるだろうと想像がつきます。夫と二人であっても、お互い大人なのだから、時に食い違いがあったとしても、分かり合おうと努力すればどうにかなるでしょう。

 そういう光景も、何となく経験的に、つまり、体験済みの応用編として想像に難くありません。たとえ晩ごはんが作れなくても、家の掃除ができなくても、洗濯物が溜まっても、「週末にまとめて片付けよう」とか、夫にも協力してもらえば、二人で何とかなると思えるのです。

 ところが、子育てとなるとそうはいきません。親にとっては子どもは何よりも愛すべき存在で、どんなことをしてでも守っていきたい一番大切な存在である一方で、まさしく複雑な存在でもあるのです。

画像はイメージです
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 女性であれば、ほぼ40週間にわたって自分のおなかの中で育った命は、その間、自分の体と行動を共にし、どこに行くにも、何をするにも一緒でした。

 激しい運動はしないように、重いものは持たないようにといたわりながら、少しずつ大きくなっていくおなかで足元が見えなくなって不自由なこともあったけれど、それでも邪魔だなんて思うことなんてなかったでしょう。

 妊娠期間中、女性はおなかの子どもとまさに一心同体なのです。

 しかし、いったん赤ちゃんが誕生するとどうでしょう。赤ちゃんは、まだ誰か大人が世話をしなければ生きてはいけないのに、それでも小さい体で次から次へと精いっぱいの主張をしてきます。もう、おなかの中にいるときのように、ママのいうことを聞いてはくれません。

 それどころか、ママの気持ちとは関係なく、一個の人格として存在するようになります。このときから、それまでの立場は逆転です。ほぼママの思い通りにできていた妊娠中から、赤ちゃんの思う通りにママが動かなければならなくなるのですから。まだ体験したことはなくても、それがどんな状態か、大人の女性は周囲の話や環境から察しがつきます。

 また、街中や交通機関の中で小さい子連れのお母さんを見かけると、子どもに合わせなければならないことを察するだけで「大変そうだな」と思えてしまう。

 そういう光景から大変さを感じ取る若い女性達が、「子育て」だけでも「大変そう」なのに、これと同時に会社で「仕事」をするなんて、考えられない! と思ってしまうのは不思議ではありません。

 妊娠中も出産前まで勤務を続けてはいるものの、出産した後に本当に復帰できるのか、不安に思いつつ働いている妊婦さんもたくさんいます。

 また、育休中も、出産後約1年間は、本当にゆっくり眠れない毎日が続きます。それを経験しただけで、復帰後の生活に不安を感じてしまうのも無理はありません。