3月25日(火)の朝、東京都内の会場で「子育て世帯が求める支援の要件を考える討論会」と題したイベントが開催されました。主催者は、「子育てシェア」の仕組みを全国に広めているAsMama(アズママ)株式会社です。埼玉県富士見市の預かり死亡事件を受けて厚生労働省が発表した「ベビーシッターなどを利用するときの留意点」や各種メディアでの報道に対し、「子育て支援を必要とするママ達の本当のニーズを知ってほしい」という趣旨で開かれた緊急会議。会場の様子をお伝えします。

 会議室にはオレンジ色のTシャツを着たAsMamaスタッフと、「AsMamaのサービスを現在、利用している」または「これから利用しようと思っている」ママ達、そしてメディアが集まりました。会の冒頭では、まずAsMama社長の甲田恵子さんによる「子育てシェア」の説明が行われました。下記、甲田さんの発言をまとめます。

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「子育てシェア」は、子どもの送迎や託児を、安心してワンコインで知り合いに頼れる仕組み

 「子育てシェア」とは、「保育(幼稚)園への送迎をお願いしたい」「子どもを預かってほしい」という育児支援を求めるママが、顔見知りのママにお手伝いを依頼することができるオンラインサービスです。

 登録料・手数料は無料。支援したママには、支援を依頼したママから1時間500円の謝礼を支払います。子育て支援中、万一、何らかの事故が起きた場合には、最高5000万円の賠償責任保険が全支援者に適用されます。つまり、子育て中の親が「誰か、子育てを手伝って!」と思ったときに、ネットで支援を依頼でき、ほぼワンコインで安心して支援を受けられます。誰かの子育てを支援したいと思っているママにとっては、喜んで支援したいと思える知人を助けることで、お小遣いを稼ぐことのできる仕組みです。

 働くママにとって、「有料であること」はメリットです。「娘の友達のママに子どもを預かってもらった時、お礼を渡そうとしたら断られてしまった」というのはよくある話。無償でも気にせず、頼り合えるママ達もいるかもしれませんが、「ちょっと気兼ねしてしまう」という人は多いでしょう。

 有料だからこそ、気兼ねなく預けることができるのです。働くママにとって、いつでも気持ちよく頼れるママ友はかけがえのない存在。「有料」の子育てシェアを使えば、その良好な関係性を長く保つことができる。ユーザー達はそう考えて登録しています。登録者数は全国に約7400人(2014年3月末時点)です。

 支払われた500円は全額、支援してくれたママの収入となります。AsMamaの運営資金は、すべて企業や行政から支払われています。地域交流の場つくりを商業施設や企業とタイアップすることで活動資金を得ているのです。

 一般の登録者への支払いは500円。保育士などの有資格者は600円。さらに、AsMamaで託児研修や訓練を受け、地域の子育てコミュニティにおけるリーダー的役割を担う「ママサポーター」と呼ばれるメンバーには700円が支払われます。

 ママサポーター志望者は、AsMamaのサイトから応募し、オリエンテーションや保育協会が公開する託児研修や、有資格者が中心となって行う訓練を受講した後、地域での顔見知りを広げるための広報活動を行います。毎日の広報を通じてリアルに知り合う人たちと子育てシェアで繋がり、十分に信頼関係が築くことができたら、子育てシェアで支援を求める登録者の依頼を受けて、送迎や託支援を積極的に行っています。現在、このママサポーターの人数は全国で300人。これを3年後には1万人に増やしたいと考えています。

日本には、ママを支援する仕組みがまだまだ足りない

 私がAsMamaを創業したのは2009年。創業前はベンチャー企業に勤務し、日々、昼夜問わず働いていました。しかし、全社員の9割をカットするという突然の人員削減に伴い、退職を余儀なくされました。4歳の娘を抱えて職業訓練校に通う中、その教室で、子どもを理由にキャリアを断念せざるを得なくなった、数々の優秀な女性達に出会ったのです。

 「子どもができたら辞めさせられてちゃってね…」
 「子どもの行事や病気で有休を使い果たして、これから先はもう休めないなって」
 「2人目が産まれたら、保育園の時間と就労時間が合わなくなったの」

 私は思いました。

 「国は少子化対策と言うけれど、結局のところ、子どもを持つ女性を活用する仕組みを全然つくることができていないじゃない」

 ないのなら、自分でつくろう――。

 多くの支援者に背中を押されて起業を決断し、今に至ります。