子どもが大きくなり「再び働き始めたい」と考えても、大都市と地方都市では事情が異なる。夫も、夫の家族も理解を示さない状況で、再び仕事へ出た女性の考えとは?

3児の産休・育休後、かつての職場に7年目のパート復帰

 近藤恵さん(仮名 35歳)の職場は、中国地方で店舗展開する地元資本の小売店だ。服飾雑貨売り場でパートを始めてまだ1年。だが多彩で難度も高い仕事を次から次へとこなしていく。接客はもとより、レジ、品出し、販売計画の立案から発注まで担当している。

 例えば、チラシに掲載された商品を、売り場のどこに配置し、どう売るか。また、毎月の売上目標を達成するには、何をどうディスプレイし、どうお薦めしていけばいいかなどを、正社員と共に考えていく。他の社員との連携なしには進まない仕事。同僚との職場コミュニケーションも良好だ。

 それもそのはず、近藤さんは、同じ職場のかつては正社員だったのだ。

 「地元の短大を卒業後、20歳で新卒入社しました。ずっと自宅から通勤していましたが、その後27歳で結婚し29歳で出産して、育休に入ったのです。結局、第3子が1歳半になるまでの7年間、ずっと産休・育休状態でした。その後ようやく、パートでの復帰を果たしたのです」

正社員で働いていた会社に、あえてパートで戻った理由

 なぜ、元の職場に、あえてパートで復帰したのか。

 「一番の理由は、待遇です。正社員がパートで職場復帰した場合、時給は1200円近くもらえます。通常、パートの時給は750円から800円程度が相場ですから、圧倒的に割がいいんです。社会保険も完備ですし、末の子が小学3年生になるまでなら、正社員にも復帰できます。こんなに恵まれた職場は、他にありません」

 ブランクがあるとはいえ、同じ職場での仕事経験があることも大きい。もちろん、7年に及んだブランクの大きさを感じる場面もある。例えば、レジの細かな仕組みや、社内のイントラ環境など、細かく言えば、キリがない。

 それでも、基本的な仕事の流れや、接客のあり方は変わらない。かつての同僚も、社内の各職場で勤務している。また、休職前に直属の上司だった男性社員が、管理職に昇進・昇格してもいる。

 「仕事も、人間関係も、一から全部覚え、習熟していくのは大変です。想像するだけで、目まいがしそうです。もちろん、未経験の仕事や職場も新鮮でいいかと思いますが、家事や育児と両立しながら、短時間勤務で大量に学び、習熟していくのは、私には難しいと思ったんです」