「仕事も育児も両立しながら楽しんで生きていきたい」という意識を持った若い世代の男性たちを支援するNPO法人ファザーリング・ジャパンは、2014年3月14日に「パパが考える転勤」フォーラムを開催(共催・ハッピー転勤プロジェクト)。転勤が夫婦のキャリア、地域社会、子どもの教育などに及ぼす影響について、妻、夫、専門家の立場からディスカッションを行った。

共働き妻の約10%が夫の転勤が理由に退職

ファザーリング・ジャパンの荒木正太さん
ファザーリング・ジャパンの荒木正太さん

 「総務省の発表によると、平成24年の1年間に転勤にともなう引越しをした日本人の数は、約84万人。これは東京の世田谷区の人口に相当します。欧米に比べると日本は、まだまだ男性正社員中心の企業が多く、その結果、本人や家族を考慮しない転勤が発生しているのではないか」とファザーリング・ジャパンの荒木正太さん。自身も2児の父親で、二度の転勤経験がある。

 1997年以降、専業主婦世帯数を上回り、その後も増加を続けている共働き世帯。2012年には1000万世帯を超える1068万世帯(厚生労働省2013年6月)となった。そんななか、「配偶者が転勤となった社員に対する配慮」について、 「特に考慮しない」と回答した企業は61%にも及んでいる(2012年に234企業を対象に労務行政研究所が実施)。

ハッピー転勤プロジェクト代表の一門真由美さん
ハッピー転勤プロジェクト代表の一門真由美さん

 また、厚生労働省2012年度に実施した調査によると共働き女性の9.7%が、未子妊娠時の退職理由として、「夫の勤務地・転勤問題で継続困難」を上げている。

 ハッピー転勤プロジェクト代表の一門真由美さんも、経済産業省を夫の名古屋転勤により退職を余儀なくされたひとり。「これまで二度、夫の転勤を経験しました。それにともない、私も二度、退職を経験。二度目の転勤の際は第一子の妊娠中だったので、転院手続きになどの問題も発生し不安でいっぱいでした」。転勤にまつわる妻の不安は、キャリアの継続をはじめ、子育てや慣れない土地での生活など、たくさんあるといいます。

子どもが小さい間は転勤せずに働きたい!

 ファザーリング・ジャパンが110人(そのうち65%がフルタイム勤務の配偶者を持つ。一方、専業主婦・夫は約20%)を対象に行ったアンケートによると、「夫婦いずれかに転勤の可能性があると、ともに継続して働くことは難しいか?」という問いに対し、「難しい」「何らかの工夫が必要」と回答した人が9割を超え、「問題ない」と回答した人はたったの5人にとどまった。転勤と能力向上の面からみても、65%が「転勤せずとも同程度の成長ができる」、もしくは「能力向上を感じない」と回答している。

 アンケートでは、「転勤すべてを否定するわけではないですが、子育て期間中(子どもが0歳から10歳)は、転勤せずに働けるような環境が理想です。子どもは親と生活することも大切ですが、地域に根ざした生活をすることも大事だと思います」(30代男性)などの声も多く聞かれた。