パパこそ育休を取るべし

 職場に育休を申し出ると「なぜ君が取得する必要があるの?」「母親が子どもを見ているなら、取る必要ないだろう」と上司などから言われるかもしれませんね。あえて言います。

「パパこそ育休を取るべし!」です。

 その理由は第一に、国も母体保護の観点から父親の育児を期待しているからです。法律上は産後8週間内に、父親だけに認められた育休があります(妻が専業主婦でも取得可能)。母親が安静にすべき産後8週間は、主として育児・家事をさせないことが前提にあるため、この期間は父親に育児・家事の担い手として期待しているのです。

 第二に、この期間に父親が育児・家事に携われると、父親としての自覚と子どもへの愛着形成、子どもが生まれた後の新しいパートナーシップの再構築が可能となるから

 第三に、家庭内の役割の硬直化を防ぐことができるからです。親の役割には「稼ぎ手役割」「教育役割」「世話役割」があるといわれていますが、日本の多くの父親は稼ぎ手役割が中心です。しかし、これだけ環境の変化が激しい時代に、父親が稼ぎ手役割だけを担い続けることは現実的でしょうか。母親は多くの育児体験を通して世話役割を習得します。一方、子どもを産んでいない父親が世話役割を習得するには、母親以上に意識して、世話をする機会を数多く体験する必要があります。その絶好の機会が「育休」です。稼ぎ手役割に加え世話役割を習得し、安定的な家庭運営を図るための大切な研修期間となります。だから「父親こそ育休を取るべし!」なのです。

育休取得のハードルの越え方

 育休取得の必要性がわかったところで、育休を取得するにはどんなハードルがあるのか、育休前のポイントを説明しましょう。

 いちばんのハードルは、実はあなたの心の中にあります。「職場に迷惑をかけないかな」「職場に男の育休取得者いないからな」「忙しくてそんな余裕はないな」「上司が反対するだろうな」「評価が下がるだろうな」「異動させられるかもな」「妻との賃金差を考えたら自分が休むのは非現実的だな」「妻は専業主婦だしな」など、取れない理由を挙げて自分の心の中で終わらせてしまうパパはたくさんいます。これは、ある程度仕方のないことではあります。

 しかし、実際に取得したパパたちに話を聞けば、おおよそ自分の中で浮かんだハードルは、「育休を取得する」と決めてアクションを起こせば解決できるものばかりだと気づくと言います。

 ・上司に数か月前から相談し、休業中の対応策を提示し一緒に考える

 ・前もって職場の協力を仰ぎ、引き継ぎの準備をする

 ・法律的にも育休は権利として認められていることをやんわり伝える

 ・上司だけでなく人事部などを巻き込む

 ・評価や昇進・昇格基準を明確にしてもらう

 ・育休復帰後も高い意欲で働くことを伝える

 上記のようなアクションを起こし、育休パパたちは戦略的に育休を獲得しています。これらはいずれも、仕事をするうえで必要な交渉力を育休取得時に活用しているに過ぎません。

 育休取得時は所得の5割が社会保険から給付され、社会保険免除を含めて6割程度が所得補償されますが、手取りや賞与への影響など、休業による所得ロスは確かです。ただ、中・長期的な世帯収入を見ると、共働きであれば、夫が家庭内で世話役割を担えるようになれば、その分妻が職場で活躍できる機会も増え、継続就労、収入確保につながるでしょう。妻が専業主婦であっても、夫が育児・家事に積極的になれば専業する必要性が薄れ、再就労という選択肢が生まれるかもしれません。夫単独で稼ぐ場合も、育休で育児・家事の理解が深まれば、家庭が安定することで仕事に集中でき、これまで以上のパフォーマンスを発揮することが期待できます。

 このように、考え得るハードルはいずれも越えられるものです。つまり、いちばん大切なのは決意と覚悟。「育休を取得する」と決めることです。