守るべきもの、変わりゆくものを見極める

 我が校では1、2年生が「りりしい低学年を見せる」というコンセプトで、ソーラン節を踊った。腰をしっかり落とし、力強いカッコかわいいソーラン節だった。しかし、別の学校の先生からは「4、5年生ぐらいでやるものでは?」「低学年はカワイイものが普通、掟(おきて)破り」と異論があった。私は担任の選択を尊重しているので、プログラムには一切口を出さなかった。ちなみに、全国的に低学年はきゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」が大流行だったらしい。外から来た私からすれば、ささいに思われるこだわりや、暗黙のルールもいくつかあった。

1・2年生のソーラン節、「ソーラン!ソーラン!」のかけ声もキリリとしていて、可愛くもたくましかった。3・4年生は愛嬌のある子達なので、ポップなダンスが似合っていた。この学年のダンスは私も一通り覚え、休み時間に一緒に踊って練習そのものを子ども達と楽しんだ
1・2年生のソーラン節、「ソーラン!ソーラン!」のかけ声もキリリとしていて、可愛くもたくましかった。3・4年生は愛嬌のある子達なので、ポップなダンスが似合っていた。この学年のダンスは私も一通り覚え、休み時間に一緒に踊って練習そのものを子ども達と楽しんだ

 公立学校の運動会が数十年たっても大きく変わっていないことは、「前例主義」「横並び主義」に陥っている現れとも言える。若い先生や子育て世代の教職員がメインになっていく中で、若手の提案を「伝統」「ありえない」の一言で潰さないでいたい。一方で、安全でスムーズな運営のためには、ベテランの目が必要だ。また、全ての児童の活躍の場を保証するという目配りについても、経験豊富な先生の配慮はさすがだった。

 「校長先生はテントの本部席に『いる』ことが大事なんです! ウロウロしないでください!」と教頭先生にくぎを刺され、撮影や応援で動き回りたい気持ちを堪えつつジリジリと日に焼け続けた運動会の1日。来賓の方に挨拶をし、地域の方に挨拶をし、かつての校長先生方に最近の学校の様子を説明する。挨拶と説明がメインの仕事だった。

 出場は綱引きと玉入れと大玉転がしに参加し、児童からの「校長先生がんばれー」の黄色い声にはうれしくなった。とにかく暑い、そして熱い一日だった。

 最後、職員室で一言求められ、すべての教職員の臨機応変さに感謝と、子どもたちのがんばりに感動したことを率直に伝えた。いつもは遅刻気味な子どもたちが、朝早く来たその時から、実は私の涙腺は緩んでいた。「家の人に、ええとこ見せたい!」その思いに、どこまで応えてやれただろうか。

 運動会の後、家庭でどんな会話を交わしていたかも、気になる。

 足の速い妹と比べられ「お前はいつもドベ(最下位)やから、見にいってもガックリや」と父親が夜、食事しながらボヤいていた記憶しか無いからだ。お願いだから、家庭でも「ええとこ探し」をしてめいっぱい褒めてほしい。学校でも運動会から一週間、いろんな教職員が子どもたちにほめ言葉を掛け続けていた。そして結束を固めて、新たな行事に向かう。イベントを乗り越えるごとに、メンバーが入れ替わった「新生チーム敷津」が強固なチームになっているのも実感している。

 2学期は学校行事が目白押しだ、11月は芸術発表会。

 小さな学校、大きな家族、チーム敷津でレッツゴー!

[本記事は日経DUAL編集部が2013年9月20日付日本経済新聞電子版に寄稿した記事を再構成しました]