忙しくても料理をがんばりたいワーキングマザーの頼れる存在、レシピサイトの「クックパッド」の創業メンバーで、現在はフードエディターとして活躍する小竹貴子さん。「料理の楽しさ」を一人でも多くの人に伝えるために走り続けている。2児の母でもある小竹さんに、キャリアと育児を思い切り楽しむための日々の工夫、そして、今に至るまでの転機について語ってもらった。

メンバーの妊娠「おめでとう!」と言いながらも、内心…

 私がクックパッドを卒業したのは、2012年の2月。ちょうど40歳になる年のことでした。たった3人で、まともなオフィスもなかった前身の会社に関わり始めたときから、9年近くの月日が経っていました。

 「料理を楽しむ人を一人でも増やしたい!」その一心で、夢中になってがむしゃらに働いていた私。ユーザー参加型の広告企画「レシピコンテスト」などが支持をいただいて、今にも潰れそうだった会社がどんどん大きく成長していく劇的な変化を、この身で体感していました。創業当時ならではの高揚感もあって、休日返上も何のその、毎日深夜まで働くのが当たり前の日々にどっぷり浸かっていました。

 そんな私が、「働き方を変えなければ」と気づいたきっかけは2段階ありました。

 第一幕は、創業以来はじめての社員の妊娠です。当時まだ18人しかいなかったスタッフのうち2人の女性メンバーがおめでたを告げてきたのです。会社にとって初めての“事件”でした。

 当時、チームをマネジメントする立場だった私は、表面上は「おめでとう!」と言いながらも、内心は相当慌てました。会社は産休の制度すら未整備だったので、大慌てで整えなければなりません。「分からないことは、第一人者に聞きにいけ」がモットーの私は、この道に詳しいフローレンスの駒崎弘樹さんと堀江由香里さんに相談することに。駒崎さんからは「制度はその気になればすぐに整えられる。それよりも大事なのは、社内の意識改革」という貴重な助言をいただきました。

 駒崎さんからノウハウを持ち帰った私は、すぐに妊娠したメンバーがいる部署の管理職のところにいって、「妊娠中や産後は体調が不安定だから、急に『半休とらせてください』と言われても、『えーッ!』って言っちゃダメ」「部内に公式発表するのは、○月頃がいいと思う」など細かく伝えました。

マニュアルを作ったけれど、なかなか変えられない働き方

 同時に、二つの“マニュアル”の作成にも着手しました。マニュアルは二つ作りました。一つは、妊娠した女性が安心して産休に入れるためのマニュアル、名づけて「クックパッド産休タイムライン」。もう一つは、部下が妊娠した時の上司向けの「虎の巻」です。人下当事者側と上司側、どちらもフォローできる体制を少しずつ整えていきました。

 ところが、です。そんなマニュアルを作っておきながら、私自身が「えーッ!」と反応してしまう事態が頻発…。当事者であるメンバーからも、「小竹さん、本当に助けてくれるんですか?」とストレートに突っ込まれたこともあります。一度染みついた働き方のスタイルやペースは、なかなか変えられないのだと実感し、反省することが度々ありました。