できる社員が参加しない、やらされ感が充満する、持ち帰り残業が増える…

【長時間労働の削減が失敗する8つの主な原因】
1) できる管理職や社員がそっぽを向く

 残業削減に踏み込んだものの、できる管理職や社員が「自分にとっては無関係な話。仕事が遅い人が勝手にやればいい」「仕事で結果を出すためには、長時間労働もやむを得ない」とそっぽを向いてしまう。その結果、長時間労働削減に向かう足並みが乱れる。

2) やらされ感が充満し、表面だけの取り組みに留まる
 人事部や長時間労働削減の担当者が、定時になるといっせいに電気を消したり、エレベーターを止めたりするだけ。「人事部ががんばっているから、強化月間だけは付き合うか」という姿勢で、意識の変革には至らず、一時的なキャンペーンで終了。

3) 持ち帰り残業が増えて、コンプライアンス上のリスクが増える
 電気を消される、強制的に退社させられることから、社員が残った仕事を持ち帰るようになる。パソコンや資料などを外に持ち出すため、コンプライアンス上のリスクが増加。休日の仕事は不祥事につながりやすく、個人情報や企業の機密情報が流出する危険性が高めてしまう。

4) 早く帰っても、飲み会と遊びが増えるだけ
 退社時間を早めた結果、社員は飲んだり遊んだりと、単に“消費”の機会を増やすだけ。ワークライフバランスを取ることの本来の意義は、仕事以外の時間で仕事の生産性に寄与するようなインプットの時間を増やすこと。他者と交流したり、学んだり、運動をしたりするのが理想。それを意識せず、「遊ぶために仕事を早めに切り上げる」社員が増え、仕事の質の向上になかなかつながらない。

5) 自分だけ仕事を終えて、割り切って帰る社員が増える
 「早く帰ること」が目的になり、同僚や先輩、後輩とのコミュニケーションを取らずに黙々と仕事をして、自分だけ早く帰ることを目指す社員が増える。社内に協調性がなくなり、「一匹狼型」の社員を増やしてしまう結果に。

6) 対応が悪くなったという、取引先からのクレームが急増
 早く帰宅することによって、取引先から「突然帰ってしまって、問い合わせに応じてもらえない」「これでは納期に間に合わない」というクレームが多数来る。

7) 社内のコミュニケーションが減り、職場が殺伐とする
 仕事がひと段落する夕方の時間帯に、休憩がてら話をして成立していたコミュニケーションが一切なくなり、職場がギスギスした雰囲気に。

8) 強化月間が終わると、即リバウンド
 残業削減の強化月間が終われば、あっという間に元の木阿弥。これまで残業ができなかった分、以前よりむしろ残業が増えてしまう。残業は1カ月当たり60時間を超えると、1.5倍の残業時間を払わなくてはならなくなる。リバウンドで残業時間が急に増える月が発生すると、会社としては大変なコスト増になってしまう。

 いかがでしょうか。「残業をやめる」「長時間労働を削減する」ということだけを考えて軽々に行動に移すと、上記のような失敗の山につながってしまうのです。