投資初心者に向けて、「投資」の基本的な考え方を紹介する「金持ちDUAL、貧乏DUAL」。前回までにどのような姿勢で投資に臨めばいいかを解説してきました。今回は、実際に投資をする場合に何を用意して、どこへ行けばいいかを解説します。

 これまで投資の原則について何点か解説してきた。

 重要なのは、低コストの投資信託を使って世界全体に投資対象を分散し、同時に買う時期も分散すること。「世界経済全体の成長にゆったりと乗る」ことで、リスクを抑えながら資産を増やしていける。

 具体的にどんな投信を買えばいいのか解説する前に、まず金融機関での口座の開き方や、注意点を知っておこう。

 ポイントは「『お薦め金融商品』は損をする」だ。

家電なら「新製品」は性能アップしているけれど……

 「今、投資信託で新しくて人気の商品はこれですよ」

 あなたが銀行や証券会社を訪れて相談すると、担当者は「新しくて人気」の投信を提示する。

 しかし、実は「新しくて人気の商品」は金融の世界ではタブーだ。

 次のグラフは1999年から2007年の各年度に、新しく販売された投信の、毎年の売れ筋10本の成績(価格の変化)が、その後3年間で市場平均(比べる対象はその投信と同じ対象。日本株の投信なら日経平均株価)に勝ったか負けたかを調べたもの。例えば3年間で日経平均が2割上がっていたとき、その投信が3割上がっていれば「勝ち」で、1割しか上がっていなければ「負け」という意味だ。99年度に売れ筋上位を占めた10本のうち、3年後に市場平均を上回っていたのはわずか1本。どういうことだろうか。

このグラフは、例えば1999年度に新しく売られた投資で残高が大きかった10本のうち、3年後にその投信が市場平均を上回った(勝った)のはわずか1本で、下回った(負けた)のが9本ということを示している。比較ができない分野の投信は除いたため、合計が10本にならない年もある(出典 モーニングスター、各年度ともに純資産が年度末に上位だった新規投信10本が対象。類似指数を比較しづらいものは除外した)
このグラフは、例えば1999年度に新しく売られた投資で残高が大きかった10本のうち、3年後にその投信が市場平均を上回った(勝った)のはわずか1本で、下回った(負けた)のが9本ということを示している。比較ができない分野の投信は除いたため、合計が10本にならない年もある(出典 モーニングスター、各年度ともに純資産が年度末に上位だった新規投信10本が対象。類似指数を比較しづらいものは除外した)

 99年度はIT(情報技術)投資がブームだった。そのため、ITをテーマにした投信が次々に設定され、よく売れた。しかし2000年以降、株式市場でIT株の下落が始まるとともにこうした投信は急落、3年後に市場平均(日経平均)を大きく下回った。

 05年から07年前半までは円安傾向だったほか、新興国株も上昇したから、この時期は外債型投信や新興国型の投信がよく売れたが、やはりその後の成績はさえない。

 要するに「新しい旬のテーマ」については、個人向けに投信が作られるころには、世界中のプロが事前にもう買い尽くしている。そこで投信を買うと、割高な価格での購入になるため、その後の下落で苦しむ結果になりやすいというわけだ。

 家電製品や自動車なら、「新しくて人気の商品」は、実際に新機能が付いていたり、省エネ性能が上がっていたりして、「いい商品」が多い。しかし金融の分野では、「新しくて人気」は逆に危ないのだ。

 しかし、みんなが買っているものは魅力的に見えてしまう。だから金融機関はそのときそのときで『旬のテーマ』の投信をどんどん作って売る。客も、今まで持っていた投信を手放して『新しい、人気の投信』に乗り換えたりする。すると、販売金融機関としては、販売手数料も新たに入るので、余計おいしい。しかし実際は既に旬の時期は過ぎているので、その投信の価格はその後下がりやすく、お客の資産は目減りしていく。こうした「負のサイクル」にはまらないことが大事だ。

 これを頭に入れたうえで、実際の投信の買い方を知ろう。