親の放任が、子どものケータイ・トラブルを招く

―― 他にも架空請求のトラブルや、ネット依存など、ケータイに関わるトラブルは数多くあります。いっそのこと、ケータイを子どもから遠ざけておいたほうが、安心という気もしますが。

目代 ケータイは利便性も高く、既に生活の必需品として、広く社会に浸透しています。どこかの時点でケータイを手にするのであれば、子どものうちからその特徴や仕組み、正しい使い方を教えることのほうが重要だと考えます。

 それにはまず、保護者がしっかりとケータイの知識を持つことが不可欠です。「インターネットや、スマホの機能は分からない」と言って、子どもに任せきりにするのは絶対によくありません。1回の失敗が、取り返しのつかない事態を招くこともあるのです。

 実際、トラブルを起こしている子どもの保護者の多くは、子どものケータイに対して放任状態だったことが報告されています。有害サイトもフィルタリングをすることで、かなり予防できるのです。

ルールを子ども自身に作らせることが大事

―― 子どもにケータイを与える前に、ケータイ教育を施すことが必要なのですね。最初は、どこから取り掛かればよいでしょう。

目代 まず、「ケータイを何に利用するか・しているか」を親子で確認し合いましょう。具体的に「メールやゲームにどれくらい時間を費やしているか」「そのためにどのくらい料金が掛かっているか」を子ども自身に自覚させることが大切です。

 それから、ルールを作ります。重要なのは、ルールの項目を子どもに考えさせるということ。自分の作ったルールなら、自ら守ろうという気持ちになれます。

 そして、守れなかった場合、ケータイを取り上げるというペナルティーはあまり好ましくありません。「メタルール」をオススメしたいと思います。「メタルール」とは、ルールを破ったら次のルールを発動するという、ルールの二重構造を指します。例えば、「夜9時以降はケータイを使わない」というルールを作り、それを破ったら、「約束を守れなかったので、1週間、親にケータイを預けます」とする。この2番目のルールも子どもに宣言させることが重要です。

 子ども自身が納得し、責任をもってケータイを使うという意識付けが大事なのです。自分の子どもだけでなく、友達ともルールを共有すると、さらに効果的です。

―― 親子がケータイ利用について、コミュニケーションを取り合うことが必要なのですね。

目代 親は常に、子どものケータイに関心を持ち続けることも大切です。それは、「メールを全部見せろ」という意味ではありません。折に触れて、「どんな利用の仕方をしているの?」と、子どもに声を掛けてみるのです。

 フィルタリングについても、フィルタリングする必要性を、子どもが理解するように説明すべきでしょう。そうでないと、子どもは親が意地悪でやっていると思い、フィルタリングの抜け道を探してしまうことにもなりかねません。ケータイ教育は、親子の信頼関係を築くことから始まります。

 もし、子どもがトラブルに巻き込まれても、頭ごなしに怒らないでください。子どもも、進んで痛い目に遭いたいわけではないのです。トラブルを回避するための正しい使い方を、再度教えてあげましょう。

 ケータイは、本来生活に役に立つ道具です。子ども達にはその道具に振り回されず、上手に使いこなしてほしいと願っています。

目代純平
チェックフィールド代表取締役。「東京都eメディアリーダー」の一人。1976年、東京都出身。中央大学在学中に、大手電機メーカーの学生インターンメンバーとして米国で次世代無線アクセスシステムの研究開発に携わる。99年、チェックフィールドを設立。現在は、IT導入・運用コンサルティング、運用管理代行を中心に約70社のIT環境を総合管理する。その傍ら、業務で得た知識をもとに「安全なケータイ、インターネットの使い方」について学校などで講演及びワークショップ活動を展開。著書に『子どものための「ケータイ」ルールブック』(総合法令出版)がある。

(ライター/北野知美)