自然あふれる環境にある保育園で、毎日走り回って子どもたちが過ごせたら……小さな子どもを持つ親としてのそんな純粋な願いは、都心の住環境では妥協せざるを得ないことが多い。しかし、東京にも子どもたちが里山を駆け回り、ニョキニョキ生えた竹に裸足でのぼる、1000坪の園庭を持った認可保育園があった。

1000坪の里山を駆け巡る子どもたち

 東京・町田駅からバスで20分ほど。周辺の小学校や中学校も都心に比べればゆとりをもった広々とした校庭がある穏やかな住宅地。緩やかな坂を上がった先に見えてきたのが、「しぜんの国保育園」。

園庭にかまどを作って、子どもたちと焼き芋。みんなで一緒に焼けるのを待つ
園庭にかまどを作って、子どもたちと焼き芋。みんなで一緒に焼けるのを待つ

 入り口に掲げてある手作り感のあるタイルの看板、玄関の手前に優しく微笑む石のお地蔵様、窓から見える木のぬくもりのある部屋の様子と子どもたちの造形作品。ベルを鳴らす前から、すべてにドキドキした。子どもたちの幸せの香りが、建物からあふれているような感覚がした。

 園内に入ると、木のぬくもりに包まれているような気分に。まだ呼吸をしているような自然の力を感じる木材たち。木でできたトンネルのようなスペースや、外から拾ってきた葉っぱなどと組み合わせて作られた工作、壁や階段や柱などに使われている木も節がはっきりと見え、まだまだ生きていると感じられるような木の雰囲気が園内にあふれていた。

 教室の間は壁で区切られているが、廊下側には壁がなくオープンな園内。廊下を歩くと、それぞれのクラスの子どもたちや先生が「こんにちはー!」と元気に挨拶してくれる。目を引いたのは、各部屋の奥にある2畳ほどのロフトスペース。屋根があったり、布がかけてあったり、トンネルのようになっていたり、少しずつ違うそのロフトスペースは、子どもたちにとってお城になったり、船になったり、住処になったり、特別でわくわくするような場所に違いない。

 「子どもたちはあのスペースが大好きです。はしごがかけてあるので危ないと思われるかもしれませんが、毎日過ごしている場所ですから、子どもたちは問題なく上り下りできますし、ケガもしませんよ」

 と、案内してくれた園スタッフの齋藤美和さん。

 各年齢ごとの教室に加えて、5つのゾーンに分かれた自由に遊べるスペースも別に用意されている。「しぜん谷」と呼ばれる異年齢保育の時間に使われるそのエリアは、子どもたちが自分の意思で行きたい場所、遊びたい場所を決めて、自由に行き来できる。