では、それを補うのは何かというと、「つながりの理解」です。ある物事と、ある物事の「つながり」を理解し、そのつながりのなかで覚えていくようにすれば記憶量の限界に対応できるようになります。
私の感覚では、つながりを理解すると、覚えるべき容量は10分の1、あるいは100分の1ですみます。加えて、覚えるのが早くなり、物事が関連づけられて記憶されているので忘れづらくなるのです。
身近な事例が子どもの好奇心を呼び覚ます
では「つながり」の理解とはどういうものなのか、例を挙げながら説明していきましょう。知識をただ詰め込もうとしても、子どもの脳の容量には限界があります。そういう時は、物事の「つながり」を理解させると、すんなり覚えることができるものです。
私がよく例に挙げるのが、人間の身体。人体はまさに科学そのものであり、理科の本質にかかわるテーマの宝庫です。たとえば「重曹に酸を加えると二酸化炭素が出る」という、受験でもよく出る大事な内容を教えるときには、こんなやり取りをします。
はじめに、子どもに問いかけます。
「胃薬を飲むと、ゲップが出ないか?」
「出る」
「それはなんでだろう?」
子どもがわからなければ胃薬を取ってきてもらって、成分を一緒に確認します。すると、難しい名前が並ぶ成分のなかに「重曹」もしくは「炭酸水素ナトリウム」と書いてあります。このふたつは呼び方が違うだけで、同じものです。
そこで私が
「炭酸水素ナトリウムというのはアルカリ性なんだよ。炭酸水素ナトリウムを飲むことによって、胃酸を中和するんだ。それで胃酸過多を治すのが胃薬だよ」
と説明すると、子どもたちは食いついてきます。そうなれば、「暗記しなさい」と言われなくても覚えてしまうのです。このように、理科ほど「つながり」を考えさせ、身体感覚に基づいたおもしろい話ができる教科はありません。
「理科は丸暗記ですよね」と言うお母さんが時々いらっしゃいますが、私からすれば、それは暴言としか思えません。
みなさんは、ご自身を振り返っていかがですか?
次回は「要領がいいだけの子は中学受験で伸びが止まる」ということについてお話ししたいと思います。