上司も本人も、「時短勤務」のその先を考えなくてはいけない

 若手のうちから活躍の場を与えることで、企業にとってもその人材のポテンシャルを発見し、適材適所で配置することができる。さらに、女性社員にとっても、早い段階から自分の役割を見つけることで、長い目でその企業でのキャリアを考えていくことができ、貢献度も高くなっていくだろう。

 育休を取得して復帰するとき、本人にも管理職にも「とにかく時短勤務の期間を乗り切る」といったような短期的な視野で仕事を見てしまいがち。しかし、重要なのは、その社員がその後も長く働くことで力を発揮し、会社に貢献してくれる人材になっていくことだ。

 「企業側は、若手女性社員が出産などを迎える年齢になる以前から『安心して子どもを産んでください。しかし、できればその前にキャリアを作っていきましょう』とメッセージを理解してもらうことが大事なのです」

 そのためには、企業側も長時間労働を当たり前とする働き方の見直しや、時短後のキャリアパスの明確化、年功序列や長時間労働に頼らない公正な評価基準の見直しなどが求められると話す。ワーママ社員だけを優遇する策というのではなく、社員全員が働きやすく、活躍しやすい場を整えていくことにつながっている。

働きやすい職場かどうか―上司の態度が部署の雰囲気を決める

 それでは、管理職として具体的に育休をとる社員にどんな対応をするべきなのだろうか?

 妊娠した部下への業務配分や引き継ぎなどはもちろん重要。だが、その前に心がけることがあるという。

 「妊娠の報告を一番に受けるのは、直属上司であることが多いです。その時に、まずは笑顔で『おめでとう』と言ってあげましょう」と山口さん。

 「今後の仕事、育休後のことなど一番不安なのは本人です。管理職の人は、妊娠中、育休復帰後も、上司の言葉の掛け方、対応すべてが部署みんなの雰囲気を左右すると思ってください。例えば、復帰後も子どもの病気での呼び出しや欠席の連絡を受けたとき、『え、また?!』と言ってしまうと、部署みんながその社員に対して厄介者というイメージを持ってしまいます。『ここは大丈夫だから、お子さんの元に行ってあげて』と上司が優しく言うと、みんなもそういうものだと受け入れられるのです」