東日本大震災から3年。地震に備えて避難バッグを用意したけれど、ずっと押し入れに入れたまま、という人はいませんか? とはいえ、仕事や子育てに追われるDUAL世帯にとって、実際に避難バッグを持って避難訓練を行ったり、定期的に中身を見直すのは簡単ではありません。そんなときに役立ち、しかも子どもと一緒に防災対策を体験できるのが「防災ピクニック」。『被災ママ812人が作った 子連れ防災手帖』『防災ピクニックが子どもを守る』(ともにメディアファクトリー)などの著書がある、NPO法人「MAMA-PLUG(ママプラグ)」の冨川万美さんにお話を聞きました。

──「防災ピクニック」とは、どんなものなのでしょうか?

 ピクニックです(笑)。ただ普通のピクニックと違うのは、手作りのお弁当の代わりに、非常食を食べる。これが防災ピクニックの基本ですね。

──非常食を食べることで何が分かるのでしょうか?

 非常食の味が分かります。笑い話ではなく、非常食の中には子どもが食べてくれないものもあるかもしれないのです。

非常食にも子どもが食べるものと食べないものがある。それを確認するのが大切
非常食にも子どもが食べるものと食べないものがある。それを確認するのが大切

被災したママから聞いた「子どもが乾パンを食べてくれなかった」

 大人なら「今は非常時だし、この食べ物は栄養価も高く満腹感も得られるから」と自分を納得させることができるでしょうが、小さな子どもはそれはできません。

 ただあまり難しいことを考えなくても全然OK。「防災」という言葉は重くて、固いじゃないですか。何をすればいいか分からなくなる。だから、できるだけ軽い気持ちで、体験してほしいですね。

 地域が指定している避難場所が公園だったらそこに行けばいいし、普段は利用できない場所だったら、全然違うところでもかまいません。家族や友達と一緒に歩いて行って、そこで非常食を食べればいいんです。

防災ピクニックでは手作り弁当のかわりに非常食を食べてみる
防災ピクニックでは手作り弁当のかわりに非常食を食べてみる

──そもそも防災ピクニックを始めたきっかけは?

 私たちは、2011年から、首都圏に避難してきた方々に向けて、アートワークショップを開いてきました。アーティストであるミレイヒロキ氏がデザインした花柄の布に色づけをしてトートバッグを作るという試みです。故郷を離れた人たちが一緒に作業をすることで避難生活に必要な情報交換もでき、福島県の寺子屋設置支援事業にも選ばれました。

 このワークショップで作業をしていると、被災したときのお話や、今困っていることなど、避難された方からいろいろな話が聞けるんですね。特に被災直後のお話はメディアで伝えられないことも多かったので、改めて取材して作ったのが『被災ママ812人が作った 子連れ防災手帖』という本でした。

 話をしてくれた人の中に、3歳のお子さんを持つお母さんがいたのですが、その人が作業中に「子どもが乾パンを食べてくれなかった」と話してくれたんですね。

 そう言われてみると、確かに乾パンは小さな子どもが好きな食べ物ではなさそうです。