面談を終える度に、一度、会場の前のテーブルに戻り、一休みする受講生もいる。やはり久しぶりの面接は緊張するのだろう。「他の人が説明を聞いている途中に同じテーブルに座るのは迷惑をかける気がします」という受講生もいた。「気持ちは分かるけど、そうしていたら話を聞けないから、面接の練習だと思って」と上山さんに背中を押され、彼女は再び企業のブースへ向かっていった。

最初はブースへ行くのをためらっていた受講生たちだが、徐々に積極的に向かうようになった
最初はブースへ行くのをためらっていた受講生たちだが、徐々に積極的に向かうようになった

 今回の求人の内容をみると、契約社員がほとんど。社員10名程度の企業もある。「いきなり正社員で、という企業は少ない」(上山さん)。退職するまでは大企業に勤めていた受講生の中には、この合同会社説明会でそういった現実を実感する人も少なくない。しかし契約社員から正社員になった修了生もいる。「最初の一歩を踏み出すことが重要」と上山さんは強調する。

仕事をしていたときの達成感を思い出す

 参加した受講生たちはどんな印象を持ったのだろう。

 「久しぶりに企業の方々とお話をさせていただいたので、とても緊張しました」というのは片村桜子さん(47)。外資系の企業に8年間勤めたあと、出産を機に退職。高校生と中学生の2人の子どもがいる。子どもが成長したこともあり、再び働きたいとリカレント教育課程に参加したという。「実際に話をすることで、就職に必要なスキルや、求められる人物像などが理解できました」

 長谷川弘子さん(44)は「会が終わった後、同期生と、昨日は疲れたね、という会話を交わしていた」そうだ。ただその疲れは嫌なものではなく、心地よい緊張感からくる疲れで「以前、仕事をしていたとき、プロジェクトが終了したときの気持ちを思い出しました」。

 長谷川さんは30代後半で出産した子どもがまだ5歳。小学生になった後の就職を目指して、リカレント教育課程に通っている。「フルタイムは無理」と考えていたが、求人票ではフルタイムと書いていたのに、話をしてみると「柔軟に対応する」と言ってくれたところもあった。「これなら思い切って応募してみればチャンスがあるかも」

 リカレント教育課程の高頭麻子所長は合同会社説明会について「この場で就職が決まらなくても、学生にとっていろいろな意味がある」と語る。多くの学生にとって、新卒の時以来の面接になるので、個別の就職面接の仕方を学習する貴重な体験になる。さらに「別の会社に就職が決まっても、ここで出会った人脈が生きる場合もある」という。

(受講生の名前は仮名です)

(文・写真/日経DUAL編集部 大谷真幸)