塾はどのように選び、使いこなせばいいのだろうか。「進学塾という選択」 (日経プレミアシリーズ)、「間違いだらけの中学受験」 (ベスト新書)の著書で教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏に首都圏の大手受験塾の特徴を聞いた。今回は最難関校に圧倒的な実績を誇るサピックスを取り上げる。

首都圏最難関校の中学受験で圧倒的な強さ

 2014年、中学入試最難関校の筆頭・開成中学の定員300人に対して、サピックスからの合格者は実に261人(2月25日時点、同社ウェブサイトより)。開成だけではない。男女御三家をはじめとする超難関校への合格実績で、サピックスは文字通り他の追随を許さない独走態勢にある。

 最難関校の合格実績が上がるからさらに優秀な生徒が集まる。好循環による優秀な塾生の増加も合格実績を大きく伸ばしている要因のひとつだろう。しかし、強さの理由はそれだけでは説明できない。

 最難関校とされる中学の入試問題は単なる知識や小手先の解答テクニックでは太刀打ちできない。自ら考え表現する力を試し、入学後に「伸びる」生徒を見極める良問が多い。サピックスはそこに特化して、思考力や表現力を重視する教材やカリキュラムを作成した。

 基本教材は「デイリーサピックス」というプリント形式の教材だ。冊子になっていない教材を使用するというのは大手の進学塾にしては珍しい。

 1つ目は、プリント形式のほうが、部分的な改訂をより頻繁に行いやすいから。そうやってデイリーサピックスは常に進化している。2つ目は予習をさせないためだ。デイリーサピックスは毎回の授業のその場で手渡される。予習ができないしくみなのだ。予習をしないことにより「今日は何を勉強するのかな?」という好奇心が駆り立てられ授業に集中する効果や、初見の課題を見てもその場で対応する力を養う効果があるという。