期間が分からないから、対応が難しい介護

鈴木会長 子育てに関してはある程度制度が整ったと思いますが、次の課題は介護ですね。

羽生 日経DUALの読者も、ご両親に子育てを手伝ってもらっている家庭が多いので、親の健康や老いを身近に感じ、介護を考え始める人もいます。

鈴木会長 企業が介護に取り組むときに難しいのは、期間が分からないということです。

鈴木亮 そこが子育てと違うところですね。

鈴木会長 子育ては、やっている最中は大変ですが、ある年齢まで行けば手が離れることも分かっています。でも、介護はいつ終わるかが分からない。企業にとっても大きな課題だと考えています。

羽生 子育てと介護ではテンションも違う気がします。「育った」「大きくなった」「かけっこで一番になった」などではないですからね。

鈴木亮 介護しながら働く女性をどうするかは、超高齢社会を迎えた日本にとっても大きな課題です。

鈴木会長 ある支店のエリア総合職(※前回参照)に、ものすごく優秀な女性がいます。独身なのですが、部下もいますし、成績が優秀なので会社の表彰式にもよく出てきます。彼女に「総合職になったらどうだ」と言ったら、「母がいるので」と断られました。お母さんの介護をしなくてはいけないから、転勤のある総合職へは移れないそうです。お母さんも転勤先に連れて行けばいいのでは、と提案したのですが、それはできないそうです。「今のままでいきます」ということでした。

鈴木亮 すでに現実の問題になりつつあるのですね。

鈴木会長 この支店には、彼女の他にもう1人、優秀な女性社員がいるんです。支店長は男性ですが、成績トップの2人が女性。もう1人の女性は結婚して子どももいる社員で、「私はこの支店でやっていきますから」と、やはり総合職への転籍は望んでいません。

 本当に今は、人それぞれ、いろいろな生き方がある時代になっています。企業もそれに対応していかなければ生き残っていけないと思いますね。

(構成/日経DUAL編集部 大谷真幸 写真/清水盟貴)