積極的に女性社員が継続して働くことができる体制作りを進めている大和証券の取り組みについて、鈴木茂晴会長に聞くインタビュー。前回(「私が女性社員に辞めてほしくない理由」)に続く第2回では、なぜ鈴木会長が女性社員が活躍できる職場作りに取り組んだのかについて聞きました。
(聞き手は鈴木亮・日本経済新聞社編集委員、羽生祥子・日経DUAL編集長)

鈴木亮編集委員(以下、鈴木亮) そもそも会長が女性社員を積極的に登用しようと考えたきっかけは何だったのですか?

鈴木茂晴会長(以下、鈴木会長) 女性にすごく優秀な人が多いからです。営業の現場で働いていたときから、優秀な女性をずっと見てきました。

鈴木会長  私が営業をしていたころ、店頭に来た人への対応と電話セールスだけを担当する女性社員がいたんです。彼女たちの仕事をよく見ていると、その中に本当に優秀な人がいるんですね。顧客との会話を聞いていても、これだったらお金が集まるだろうなと思う内容なんですよ。とても貴重な戦力なのです。でも、彼女たちは結婚したら辞めていく。

鈴木亮 出産退職ではなく、結婚退職の時代ですね。

鈴木会長 だから私が社長になる直前、転居を伴う異動がないこと以外は総合職と全く同じ「エリア総合職」という職種を作ったのです。

エリアに根ざした女性社員を生かす

鈴木会長 転勤がないから、家庭を離れる必要はありません。寮などには入れませんが、もともとその土地に住んでいた人たちですからね。

羽生祥子編集長(以下、羽生) エリア総合職を作ったのはいつ頃ですか?

鈴木会長 今から12~13年前になるのかな。

鈴木亮 ちょうど証券会社の利益の上げ方が変わってきた時期ですね。

鈴木会長 おっしゃるとおりです。ビジネスモデルが、右にあるものを左に持っていき、次に左にあるものを右に持っていくみたいな、手数料で稼いだ人間の勝ちというやり方ではなく、新しい顧客を作って、新しいお金を持ってきた人間が一番優秀なんですよ、というものに変わってきた時期です。こうなると、体力勝負ではなくなるので、女性でも男性社員と同じ土俵で競争ができます。

鈴木亮 転勤でやってきた男性より、そのエリアに根ざして生活している女性のほうが得意という場合もあるでしょうね。

鈴木会長 実際、そういう状況になると、徐々に活躍する女性が出てきたんです。