「育休はある」のが前提

羽生 そうやって優秀な女性社員がでてくることは素晴らしいことだと思います。でも、上司の立場からしたら、優秀だからこそ「育休で一年間空いた穴をどうしよう」と悩むのではありませんか?

鈴木会長 育休の社員がいる支店は多いですからね。うちの場合、3人目の子どもの育休という人も多いんですよ。

羽生 すごいですね。日経DUALに届く声では「部内で育休を取るのは私がはじめて」というケースが多いんです。どうしたら人事に迷惑をかけないで育休を取れるのか。そこまで心配している人たちもいます。

鈴木亮 管理職の立場からすると、できる女性であればあるほど、彼女が休むことで自分の部署のパフォーマンスが落ちますよね。その穴を埋めるために、結局他の社員へしわ寄せが行く。気持ちよく育休は取らせてあげたい、同時に他の部員のモチベーションは保ちたい。その間で管理職が悩んでいる。その次元の会社のほうがまだ圧倒的に多いと思います。

羽生 人事のローテーションを工夫していたりするのですか?

鈴木会長 そういうことはまったくありません。そもそもエリア総合職は転勤がないので、工夫のしようがないのです。だから管理職は「育休はある」という前提で働かないといけません。

羽生 育休が前提なんですね。

鈴木会長 たしかに支店長になったばかりでトップクラスの女性が育休を取ると言われたら「うーん」と思うかもしれません。支店は、1位から百何位まで、ずっと順位がつきますから。

羽生 部員の育休のために順位が落ちたとしたら・・・。

鈴木会長 だから私はいつも「順位で全てを見ていないよ」と伝えるようにしているんです。スターを生み出した支店長、名伯楽な支店長が一番偉いんですよ、と。

スターがいる部署は全体のレベルが上がっている

鈴木会長 さらに不思議なもので、4番バッターがいなくなると、次のスターが出てくるんです。7番バッターだった人がグンと伸びる。そういう成長があると、あの支店長はよくやっているなと評価するわけです。

 女性でも男性でもスターがいる支店は、そのスターが支店全体のレベルを上げているんですよ。だからその人がいなくなっても、全体のレベルが上がっているから、スターの不在を補える支店になっている。トップの不在が次の世代を育てるきっかけになると考えると、育休を取ることも会社によい影響を与えているのです。