2009年4月、女性の役員を4人同時に誕生させた大和証券グループ。大手証券会社では初めてということもあって、大きな話題になりました。それ以降も同社は積極的に女性が働ける体制作りを進めています。2009年当時の社長で、現在、同社の会長を務める鈴木茂晴氏に、大和証券の取り組みや、女性の登用を進めてきた意図について話を聞きました。
(聞き手は鈴木亮・日本経済新聞編集委員、羽生祥子・日経DUAL編集長)

自分の経済力を手放してはいけない

鈴木亮編集委員(以下、鈴木亮) 「日経DUAL」は、子育て中の共働き世帯に役立つ情報を提供しているウェブメディアです。今回は、ぜひ、業界に先駆けて、女性の登用に取り組んでいる大和証券のお話を聞かせてください。

鈴木茂晴会長(以下、鈴木会長) うちが他社よりも進んでいるかどうかは分かりません。ただ「今はダブルインカムの時代なんだ」と社員に強く言っているのは事実です。

羽生祥子編集長(以下、羽生) それは社員の皆さんにおっしゃっているんですか。

鈴木会長 はい。男性の社員にも女性の社員にもみんなに言っています。今、自分が持っている経済力を手放してはいけない。私が入社したころとは時代が違うんです。

 私が会社に入ったころは、インフレもあって、4万円だった初任給が1年ごとに8000円くらい上がっていったんです。

鈴木亮 月給が20%ずつ増えていったわけですね。

鈴木会長 ものすごい勢いで上がっていった。インフレもすごかったけど、給料の上がり方もすごかった。だから、なんとなく将来も暮らしていけるかなと思っていました。「このタイミングで家を買っておいたほうが得かな」なんて考えたりしながら。

鈴木亮 家の資産価値が上がっていきますからね。

鈴木会長 このまま会社にいれば、必ず偉くなれて、給料も増えるという認識をみんなが持っていたんですね。そういう時代だから、奥さんが専業主婦というのが普通だったわけです。

 ところが今は、給料が増えるかどうか分からない。何が突然起きるか分からない時代です。夫におんぶに抱っこで専業主婦として暮らしていくのは難しい。だから特に女性社員には「辞めたらあかんよ」と強く言っているんです。

鈴木亮 昔で言う「DINKS」ですね。

鈴木会長 DINKSは「ダブル・インカム・ノー・キッズ」ですが、私は今、「ダブル・インカム・2・キッズ」でお願いします、と言っています。そうすれば人口の減少も抑えられる。個人が生きる道でもあり、日本が生きる道でもあるんです。