不思議なもので、初対面のおじさんは次女を見たとたん、一気に機嫌をよくしました。僕は、かつて大学の恩師で、僕にフィールドワークの基礎を教えてくれた中村尚司先生が、アジア経済学者の鶴見良行先生から言われたという話を思い出しました。

 「海外では子どもと歩くと怪しまれない。フィールドワークは子どもと歩くといい」

 なるほど!怪しまれないって、こういうことか(笑)。

 田んぼから浮き草を頂き、そのまま帰るのも失礼なので、次女一人でお礼に行かせました。すると玄関先で話し込んでいる様子。浮き草についていろいろ教えてくれていたのです。こういうシーンに遭遇すると本当に嬉しいですね。

 自宅に戻り、次女とたくさん増えるための環境条件について話しました。水に植物の肥料を補うと良く繁殖するのでは? 水底に土が入っているほうが繁殖するのでは? 太陽にあてた方が繁殖するのでは? 水道水より、自然の川の水を使ったほうが(つまり、田んぼの環境条件に近いほうが)繁殖するのではないか?

 こういった仮説をたくさん出して、最終的には(日向/日陰)×(水道水/川の水/肥料水)×(土入り/土なし)で環境を変えたカップを12種類つくり、そこに浮き草を10本入れて、10日間観察してみることにしました。次女は毎日、各カップの水温と浮き草の数を数え、写真を撮影していきました。

家族全員が仮説を立てて、研究をテーマに語り合う

 やっぱり家族みんな、それぞれの仮説を持っていて、どれが一番増えるとか、気になっているんです。長女も学校から帰ってきた時にカップをのぞいていて、ご飯を食べながら浮き草の話をするほど。家族の好奇心をくすぐる効果が見られました。

 実験結果では、日なたの浮き草が日かげのものに比べて、約2倍も繁殖しました。

 僕は土があった方が成長すると思ったのですが、土はそれほど成長に影響を与えていませんでした。その理由を突き止めたかったのですが、残念ながら時間が足りませんでした。ホームセンターで模造紙を購入し、写真を現像して、結果をまとめて学校に提出しました。

次女がまとめた研究結果
次女がまとめた研究結果