イクボスの条件その5… 配慮

 家族を伴う転勤や単身赴任など、部下のライフに「大きく」影響をおよぼす人事については、最大限の配慮をしていること

 日曜の夜8時、新幹線のホームで、ひっしと抱き合う小さな子どもとパパ、そして近くに寄り添うママ。発車のベルが鳴ると、パパは後ろ髪を引かれながら新幹線に乗り込んでいく。

 「楽しかったね。また来週、会いに来るからね」「えーん、パパ! 行かないでー。まだ一緒にいたいよう」「ごめんね。パパも頑張るからね。ママの言うこと聞くんだよ…」プシュー(無情にもドアが閉まる)。

 日本全国で毎週のように繰り広げられているであろう、「単身赴任の残酷劇」です。僕は講演で全国を回っているのですが、本当によく見かける光景です。つくづく思うんです。いったいどんな大した理由があって、小さな子どもがいる家族をわざわざ引き裂くのだろうと。

子どもがいる部下の遠方赴任やタイミングは最大限の配慮を

 海外で働いた経験のある方はご存じと思いますが、「単身赴任」というシステムがあるのは日本だけ。欧米先進国では、社員の遠方赴任が決まったら、パートナーも一緒に現地で働ける就職先か収入を保証して、家族まとめて暮らせる配慮が当然のようになされます。

 北欧では、「幼い子どもが家族と多くの時間を共有できることは、その後の人間形成や家族の絆の形成に大きく影響する」ということが社会全体に広く認知され、企業文化にも浸透しています。日本は残念ながら「家族については、個人の責任で何とかしてください」と、社員とその家族が犠牲を払うことになっていますよね。

 日本の企業全体が単身赴任の制度を見直す日はまだまだ遠いかもしれません。でも、一人ひとりの上司が個人の心がけで今日からできる配慮はあるはずです。

 部下の家族の事情を考慮して、人事担当者と情報を共有しながら、遠方赴任の人選やタイミングについては、最大限の配慮をしましょう。

 残りの5カ条は、次回に! また、こちらでお会いしましょう。

(ライター/宮本恵理子)