私立や国立の中高一貫校に通う子どもたちはほとんど全員、通塾を経験している。しかも、その大半は大手塾に通っているのが実態だ。

 開成や筑駒(筑波大学附属駒場)、灘、桜蔭などに通うような、明らかに地頭のいい子どもでも、塾の力を借りずに独学で中学受験に合格したという子どもはほとんどいない。ときどき塾に行かずに中学受験に合格したという話も聞くが、詳しく聞けば、中学受験経験者の父親がほぼ毎日家庭教師のような状態で子どもの勉強を見ていたり、親が元教員だったりというケースがほとんどだ。

中学受験生は本当にかわいそうなのか?

 夜遅くまで塾で勉強させられる小学生たちは学歴社会の被害者と思われ、塾にわが子を送りこむ保護者は正気を失っているかのようないわれ方をすることもある。

 通塾の頻度は、たとえばサピックスの場合、4年生で週2回、5年生で週3回、6年生で週3~4回(特訓講座の有無によって違う)。4・5年生のうちは授業は20時まで。6年生でも21時までである。

 ひとによってはさらに弱点補強のための個別指導塾に通ったり、家庭教師をつけたり、眠い目をこすりながら夜中まで塾の宿題に追われたりというケースが少ないわけではないが、それが基本形ではない。プロ野球選手でも、音楽家でも、のちのち一流になるひとたちは、小学生のころから、友達と遊ぶのを我慢して、ときには涙を流しながら、毎日の練習に励んでいる場合が多い。中学受験生も同じである。これをかわいそうとみるかどうか。判断は分かれるだろう。

 中学入試が終わると、「開成何名、桜蔭何名……」と、御三家やそれと同等の最難関校に、どの塾から何名合格したかという数字ばかりが話題になる。たしかに最難関校に合格者を出すことは塾として「最高」の成果だろう。しかし「最高」の部分にだけ目を向けていては、中学入試の全体像を見落とすことになる。