現実問題として、そのような最難関校に合格できるのは一握りのトップ集団だけだ。大多数の中学受験生は、それぞれのレベルでの第一志望合格を目指している。彼らを「納得できる合格」に導くことこそ進学塾に求められる「最大」のミッションであるはずだ。「最大」の部分でのパフォーマンスの高さこそ、生徒やその保護者たちの肌感覚的な満足度の総和と一致するはずだ。

 高校別東大合格者数と塾別の中学合格者数のデータは似て非なるものである。高校の大学合格実績が伸びたとしても、翌年の生徒総数は増えない。しかし塾の場合、実績を残した塾にさらに優秀な生徒が集まるので、さらに実績が上積みされるという上昇気流が生まれやすい。

最難関校合格者ばかりが注目されミスマッチ増える懸念

 近年、最難関校入試実績においては大手の寡占化が進んでいる。最難関校における合格者数ばかりが注目され、一部大手塾に生徒が過度に集中してしまうようでは、ミスマッチも増えるだろう。

 2014年春の首都圏の中学受験では、男女御三家でサピックスが昨年比較でさらに合格者数を伸ばした。完全に上昇気流をつかんでいるこの勢いはしばらく止まりそうにはない。男女御三家(男子は開成・麻布・私立武蔵、女子は桜蔭、女子学院、雙葉)の実績でいえば、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研がほぼ横並び状態だが、サピックスとの差は大きい。男女御三家6校の合計合格者数において、サピックスは約830人であるのに対し、その他3塾がいずれも約310人。具体的な数字は非公開でわからないが、サピックスだけが生徒数が多いのかというとまったくそうではない。

 最初に結論からいうならば、ベストな塾など存在しない。探すべきは、わが子と相性のいい塾であり、もっといえば、塾選びにエネルギーを費やすより、塾を使いこなすことに意識を注いだほうがいい。そうすれば、その塾は、わが子にとってベストの塾になる。

 次回から4回にわたって、人気中学受験塾の特徴と使いこなしのコツを解説する。