「油揚げの油抜きをしまーす!」「氷をくださーい!」あちこちから声が上がる。

 味付けの要となる「だし」を取るために大きさ違いの雪平鍋をいくつも手際よくさばくチーム、あく取りに余念がないチーム。どのチームもいつもとは勝手の違う調理台で少数(6人分)の給食を制限時間の1時間以内に用意しなければならない。作業は調理、盛り付け、配膳および後片付けまで。

 大きな冷蔵庫に貼られた工程表がいくら念入りに作られていてもハプニングは起きる。例えば、慣れない火加減に戸惑うチームもあった。
 一人が調理、一人が片付けを同時進行で行うチームもあれば、同時に調理に専念して使ったボールや皿にキッチンハイターをひと吹きした後、足元のワゴンに積んでいくチームもあった。二人の呼吸が何より試される。

 調理時間20分を経過するとあちこちから、だしのいい匂いが立ち込めてきた。

 飛び魚や甘えび、鯉を揚げる油の音も聞こえてくる。

選手に課せられる、大会ルール6つ

 ここで、選手に課せられた大会ルールを紹介する。

1. 献立は決勝大会までに学校給食として提供したことがあるものを選ぶ
2. 文部科学省学校給食摂取基準に準じている献立を作る
3. 地場産物を使用し、その特色を活かした献立にする
4. 食育の教材として活用されていること
5. 栄養量や分量を適正にする
6. 子どもが喜び、郷土愛を育む献立にする

 ……など注文は多い。そのうえで、淡々と黙々と調理に専念する。鍋やフライパンの扱いにも注意を払い、野菜を切るとき、肉を切るときでまな板を使い分ける。煮物、焼き物、揚げ物は鍋やフライパンで加熱途中の食材に温度計を入れ、中心部の温度を測る。細菌を消滅させるために1分以上、75度以上の状態を維持できているか確認することを義務付けられているからだ。調理台の上にアルミパネルを立て、スペースを区切って違う作業工程での衛生環境を保つ工夫も見られた。