前記事の「ニッポンの給食に熱い視線 衛生管理は宇宙食レベル」「給食作りは子どもの『命・人生・夢』を預かる仕事」に引き続き、給食の今に注目する。今回は、東京・足立区の「おいしい給食担当」を取材した。

残菜率の減少に大きく貢献した、「おいしい給食担当」の成果

 『日本一おいしい給食を目指している 東京・足立区の給食室 毎日食べたい12栄養素バランスごはん』という本がある。足立区立の給食の人気メニューを家庭用にアレンジしたレシピ本だ。「1食あたり650kcal」「塩分3g/1食で12栄養素がバランスよく摂れる」「1食あたりの食材300円未満」を謳い、2013年現在7万7000部の発行部数を誇る、人気のベストセラーとなっている。毎食献立を考える苦労に悩まされるママ&パパにはうれしいヒントが満載の本だ。

 足立区役所には総務課、政策経営課などと同列に「おいしい給食担当」という部署が存在する。「おいしい給食担当」課長・望月義実さんと、同じく係長の安田真人さん、栄養士歴14年という黒川真美さんから話を聞いた。

「おいしい給食担当」課長・望月義実さん(左)、同じく係長の安田真人さん(右)、栄養士の黒川真美さん(中央)
「おいしい給食担当」課長・望月義実さん(左)、同じく係長の安田真人さん(右)、栄養士の黒川真美さん(中央)

 そもそもなぜ足立区が「日本一おいしい給食」を目指すに至ったのだろうか?

「平成19年に発表された、近藤やよい区長のマニフェストがきっかけでした」(安田さん)

 区長が環境問題への取り組み調査の過程で産業廃棄物に占められる生ゴミに着目した際、給食の残菜率が高いという問題が浮かび上がった。

 足立区では平成25年4月現在、小中学校併せて107校分の給食を自校調理法でまかなっている。残菜率を減らすには子ども達が残さず食べる「おいしい給食」の提供が一番有効な対策だと考え、「日本一おいしい給食を目指す」をスローガンとして掲げることになった。

 足立区の「おいしい給食」とは単に味がいいとか、子ども達が好きなものだけを贅沢に食べさせることを指してはいない。給食を通じて生きる力を養い、自然の恵みや作り手への感謝を育むための心を豊かにすることを目指している。