給食を「おいしく」した結果、残飯が5年で2分の1に減った

 この取り組みの成果は、年間平均残菜率に確実に現れている。2008年には年間平均11.0%だった残菜率が2012年には5%に減った。同じく、381トン/年だった残飯が197トン/年にまで減少した。中学生の給食一膳分(1食辺り300円、800g)に換算すると、合計6900万円分の食材を残さずに食べた計算になる。

 この成果の背景には学校によってまちまちだった計量方法を統一して残菜率を測定し、見える化したことも役立った。

 現在、区内の小学生97%、中学生82%が「毎日の給食を楽しみにしている」という調査結果もある。

 足立区が「給食」において注目された理由は、給食献立から日本の食文化を学んでほしいという願いも込められたレシピ集制作プロジェクト。だが、それ以外にも「おいしい給食推進事業」によって、さまざまな取り組みが実行されてきた。

 「楽しく食べる喜びを分かち合うこと」「食育を通して健康な身体を育む食べ物について知ること」の実践として、ときにはカリスマシェフに献立を考えてもらう「スーパー給食」をはじめ、好きなものだけ食べるのではなく緑・赤・黄のバランスを考えて自分の頭で食材の組み合わせを選ぶための「バイキング給食」、選ぶ楽しさを知る「セレクト給食」など、どれも食欲を向上させる工夫にあふれ、子どもの健康を思いやった取り組みだ。平成23年からは教育委員会に「こども家庭部」を編入し、保育園からの食育にも力を入れている。

 また、足立区と友好都市提携を結んでいる新潟県魚沼市と共同で稲刈りや田植えの体験や、その際、宿泊先の民宿で配膳を手伝うなどし、食べる時間の楽しみや作り手への感謝の気持ちを育む機会を設けている。

 「毎年1回、新米の時期にはコシヒカリ給食が恒例になっています。自分で植えたお米ですから、おいしさもひとしお。子ども達はよろこんで本当によく食べます」(望月さん)