「給食」と聞いて何を連想するだろう。「先割れスプーン」「揚げパン」「ソフト麺」「おかわり競争」……。小中学生時代の、照れくさく、どこか甘酸っぱいノスタルジーと共に語られる懐かしい思い出。最近では、恩師を車掌として招き、貸し切り新幹線で懐かしい給食メニューを囲むシニア世代の謝恩会をはじめ、婚活イベントにすら「給食タイム」が盛り込まれ、話題となっている。給食居酒屋も相変わらず人気だ。

 世代や時代や地域を超えて、日本人に共通の心象風景となっている、「給食」。

 その給食が今、驚くべき進化を遂げていることは実はあまり知られていない。

 例えば、1996年に起きたO-157による食中毒を境に徹底された衛生管理。そのクリア基準が「宇宙食」と同じレベルで全国的に均一に適用されている事実をご存じだろうか。

 また2012年12月、東京・調布市で起こったアレルギーによる女児死亡事故の痛ましいニュースは記憶に新しいが、子どもたちの深刻なアレルギー問題(魚、そば、卵、甲殻類など)に対応すべく除去食、代替食などの特別食を適宜導入するなど、実にきめ細かい現場対応が求められている。

 さらに肥満や生活習慣病対策の一環としての厳しい塩分規制、児童1人給食1回当たりに定められる、カルシウム、ビタミン、鉄分の摂取基準値、栄養価の高さと献立のバランス、食材産地の情報公開、食べ残し軽減問題、食育への取り組みなど、関係者が抱えている課題を数えだしたら、枚挙にいとまがない。

 共働きのママ&パパにとって「給食」は子どもの食生活のトータルバランスを支えるサポーターとも言える。多忙なパパやママに代わり、日経DUALが給食の現場の実態を探るべく、取材を開始した。初回は『世の中への扉 めざせ! 給食甲子園』の著者、こうやまのりおさんを訪ねた。

「ふるさとの味」を競う、給食甲子園 合言葉は「地産地消」

2013年12月の「第8回 全国学校給食甲子園」決勝の様子
2013年12月の「第8回 全国学校給食甲子園」決勝の様子

 こうやまさんが給食現場の進化の実態を知ったのは、2012年12月に開催された第7回給食甲子園の取材がきっかけだった。

 給食甲子園とは全国2000を超えるチーム(小中学校の給食センターを含む)の中から予選を勝ち抜き、12チームが日本一の給食作りを目指して繰り広げる闘いだ。審査の基準は、子どもたちが安全・安心に食べられる衛生的な給食であること、子どもたちの笑顔がはじける、おいしくて栄養価の高い給食であること。この2点に加えて第7回は「地元の食材をふんだんに使って郷土愛を育む給食」であることが求められた。「地産地消」は今日の給食の全国的なテーマでもある。