「等身大ワーママの本音」が参加者に刺さる

 渡部さんは言います。

 「復職後、フルタイム勤務でも極力残業はせず、17時に退社する代わりに高い目標設定を自分に課し、意地でも達成し続けてきましたが、子どもの学級崩壊やいじめ問題に遭遇したときは、仕事にブレーキをかけざるを得ず、真剣に考え悩んだ時期がありました

 「年々、体力の限界という見えざる壁の存在を意識して新しいワークスタイルの模索もしています。世の中の、生産性重視を声高にうたいながら、長時間労働ありきのシステムが変わらなければ、時短勤務のワーママは戦力対象外と見なされる思想を生みやすいのは間違いありません」

 「だからこそ、組織で働くワーママは、勤務先の女性管理職や出世しているワーママの比率などを冷静に見極めたうえで、妥協点を見つけ、なりたい自分の姿と折り合いをつけることが大事なんです」

 参加者の中には、リクルートキャリアの人事担当(当時)である佐藤雄佑さんもいました。佐藤さんは同社初の育児休暇取得中の男性社員です。0歳の子どもを同伴しての参加となり、他の参加者からワーパパ代表として意見を求められる場面もありました。

 「自分が育休を取得して初めて、会社にしっかりした産休・育休制度があることと、ワーママが全力で仕事に打ち込める風土があるかどうかは別問題であることに気づきました。ワーママが特別な存在にならない環境が必要だと感じています」(佐藤さん)

 一歩踏み込めば、雇用の根深い諸問題に迫る勢いのワーママ会を、渡部さんはこんな言葉で締めました。

 「それでも辞めないで仕事を続けていると、確実に自分の選択肢が増えていきます。子ども(家庭)にも仕事(会社)でも色々なことが起こるけど、とにかく楽しむこと!」

 イベント終了後のアンケートでは、参加者の多くが次回の開催への期待を口にしていました。

 「働く母さんはつらいよ。でも頑張るんだよ!」という渡部さんの本音メッセージが、ストレートにママ達に届いていました。

(ライター/砂塚美穂、撮影/筒井智子)