子連れワークスタイルで、ワークライフミックス事業

モーハウス代表の光畑由佳さん
モーハウス代表の光畑由佳さん

 第二部は講師を迎えてのセミナースタイル。最初の講師は、光畑由佳さん。自分自身の子育て経験を出発点として、ビジネスを立ち上げた一人だ。

 ネット通販や青山などの店舗で、「1秒で授乳可能な“授乳服”」を販売するショップ、モーハウスの代表。人前でも胸をはだけることなく、ママ達がいつでもどこでも気兼ねなく授乳できるおしゃれな服をという発想は、自身が次女を出産後に感じた不自由さがきっかけだったそう。

 電車の中で泣き出した生後一カ月のわが子をなだめるためにやむを得ず授乳したところ、車内の戸惑った視線を浴びることに。

 「これではお母さんは外出さえままならない。子育ての間、ママ達の行動が制限されるのはもったいない」(光畑さん)

 その一念で授乳服を編み出し、ヒット商品につなげた。さらにワークライフバランスならぬ“ワークライフミックス”をキャッチフレーズにしている。社員の「子連れ出勤」スタイルを推進するNPO代表も勤めているのだ。

 仕事場には保育施設を併設するのではなく、子どもを連れて仕事をするという独自のスタイルを実践。スタッフ達は会議中も、電話中も接客中も「抱っこ」したまま。どんな阿鼻叫喚の職場か? と誤解されがちだが、来訪者はみな、職場の静けさに驚くのだそう。

 江戸時代の日本の子育てがそうであったように、みなで子どもを見守り育てることが当たり前の環境が赤ちゃんに落ち着きをもたらすようだ。

 「こうした光景を当たり前だと思える職場環境を追求すべきだという思いではなく、子連れ出勤が可能になれば働き方はもっと模索できるはず」とする柔軟な発想が根底にある。今後、高齢者が増加し、仕事と介護を両立する社員が増えた場合は、「親連れ出勤」さえ当たり前になるかもしれないとする。

* 次回のテーマは「ママに優しいコワーキングスペース」非営利型株式会社ポラリス(東京都調布市)の市川望美さんとHatch Cowork+Kids(東京都港区)片山勇志さんの取り組みを紹介します。

第二部セミナーで光畑さんの話を聞き入る参加者
第二部セミナーで光畑さんの話を聞き入る参加者

(ライター/砂塚美穂、撮影/花井智子)