「私抜きでも会社は回る」という現実を知り、見えてくる世界

Waris共同代表の米倉史夏さん
Waris共同代表の米倉史夏さん

 第一部は軽食を囲んでの交流会。会場には70人を超える参加者が集まった。

 日本財団関係者の挨拶やママ達の子育て支援サービスを開拓する企業による商品デモストレーションを聞きながら、あちこちで名刺交換が行われていく。その中にWaris共同代表の米倉史夏さんの姿もあった。

 自身、出産を機に働き方を見直すこととなり、同じような境遇にいるママ達と企業側の雇用ニーズを主に業務委託という形態でつなぐ会社を立ち上げた女性だ。Warisに登録しているママ達は復職の際、一体どんなことを相談するのか聞いてみた。

 「無我夢中で仕事一筋に働いてきた方ほど、妊娠・出産を機に自分の意志の及ばない“お休み”が巡ってきたことで、初めて味わう解放感があるようです。自分抜きでも会社が回ることを知り、はじめのうちは少し寂しく感じていても、これまで執着していたワークスタイルに捉われなくなる」(米倉さん)

 「キャリアロスだとか、人生の踊り場だとか、マイナスイメージを持つよりも、子どもを持つことではじめて見えてきた価値観を、その後の働き方に取り入れたいと自発的な気づきを経験される方が多いかもしれません」(米倉さん)

 その選択が業務委託というワークスタイル。時間的にも空間的にも自己裁量の幅が増え、子どもとの時間も捻出しやすい。無理のない形態で育児ともフィットする。

助産師の田中佳子さん
助産師の田中佳子さん

 次に、助産師である田中佳子さんにも話を聞いた。現在、東京都調布市の健康課で赤ちゃん訪問をしているという。

 「出産直後から授乳期までのママはとりわけデリケートになっています。実はこの時期こそ、ママ達が育児で一番孤独を感じやすいときではないかと思うのです」(田中さん)

 子どもが歩き出してママ友ができる頃になれば、外で憂さ晴らしもできる。でも、まだ生まれたばかりの頃は、ママは夜中の授乳で睡眠不足が続き、室内で一日中乳児と向き合わなければいけない。仕事で忙しくしている夫にもなかなか本心を相談しずらく、協力者にも恵まれない場合もある。

 そんな「ママ達のつらさを少しでも軽減できれば」との思いから調布でフォーラムを開いたり、病院に行くほどではないが誰かに相談したいママのための無料相談会をしたり、授乳時のセルフマッサージなどの出張講師をしたりしている。ママとして、当事者だから分かる「あったらいいな」を仕事に生かしているのだそうだ。