ケータイ時代のセーフティー・システムは、スマホ時代にはもう通用しない

―― 親が子どものネット利用を管理できないことで、トラブルが増えているのですね。しかし最近では、青少年ネット規制法の制定や、ネットパトロールなど、行政や民間も対策に乗り出しているようです。

下田 行政の動きは遅過ぎます。それに、トラブルを回避できるような対策には至っていません。特に、ネット依存や中毒といった問題から子どもを守ることができるのは、結局のところ、親しかいないと私は思います。

 近年はスマートフォン(スマホ)が普及し、中でも「LINE」の拡大によって、保護者のペアレンタルコントロールはますます難しくなってきました。子ども達をネットの被害・加害から守るためのケータイ時代のセーフティー・システムは、スマホ時代には通用しません。ケータイ時代に作られた、子どもの安全のための対策は、実質無効化しているのが現状でしょう。

―― ケータイ時代のセーフティー・システムは、なぜスマホ時代には通用しないのでしょう?

下田 ケータイ時代には、有害情報の受発信を防御するシステムが、一定の効果をもたらしていました。具体的に言えば、有害サイトの受信をブロックするためにフィルタリングが導入され、法律でも義務化されました。発信のほうでは、ネットいじめなど、子どもが加害的な書き込みをしていないか、サイトを見回るネットパトロールも実施されています。しかし、フィルタリングは、スマホには適用されません。アプリを規制する法律もまだ作られていません。そして、「LINE」はネットパトロールもできないのです。

―― スマホ時代のセーフティー・システムが、まだ社会的に制度化されていないわけですね。しかし最近は、小学生でもスマホを持つ子どもが増えています。

下田 子どもにとって、スマホやケータイは、連絡ツールというより、ゲームや音楽が楽しめて、親に知られずに人とコンタクトできる「快楽の道具」になっていると言えるのです。特にスマホは、ネット利用がしやすく、さらに楽しく遊ぶことができます。そうした中、ネット依存が社会問題になってきていますが、スマホ時代には、さらに依存者が増えると私は見ています。

 なお、ネット依存や中毒化は、従来の中高生の思春期の問題のみならず、乳幼児期から意識すべき問題です。今は、乳幼児期の子ども達がスマホやタブレットを利用するようになりました。ネット依存が乳幼児期から始まると、治療が困難になるという指摘もされています。わが国のネット依存の予防、治療体制は諸外国から遅れていることから考えても、乳幼児期からのスマホ、タブレットの利用は危険です。