「仕事と子育ての両立」―これまではもっぱら女性たちが悩んできたテーマが、今、男性の眼前に迫っている。親も上司も先輩も経験してこなかった境遇。まだ「男は仕事をしてナンボ」の組織の中で働きにくさや孤独感を感じつつ、会社では悩む姿をおくびにも出さず、重圧にも笑顔で耐えている…。働きながら子育てをする男性たちの日常、そして滅多にもらさない彼らの汗と涙と笑顔の本音を、書籍『男たちのワークライフバランス』からお届けします。

    お迎え時間ギリギリのときは駅から猛ダッシュ

     朝の準備が終わると、いよいよ保育園に向かう。到着したはいいが、なかなかスムーズにいかないこともある。

     特に、保育園に通い始めの頃の子どもは、慣れない環境に戸惑いを見せる。知らない大人、どこへ続いているのかわからない廊下。親から離れることに半狂乱になり、泣きじゃくるのは当たり前だ。

     「パパ、ママ」と泣き叫ばれて、身を引き裂かれる思いで保育園をあとにする。早い子どもなら1週間ほどで順応してくれるそうだが、人見知りする子だと、慣れるまでに1カ月ほど時間を要することもある。

     慣れてくれば、あとはルーティンの作業が待っている。着替えやオムツ、タオルなどを教室内の所定の場所に置き、担当の先生に日誌を渡して、挨拶を交わす。所要時間にして5分から10分程度だ。

     ところで、午後6時や7時という遅い時間まで開園している保育園は、共働き夫婦にとってなくてはならない存在だ。さらには時間延長の制度もあり、そこから1時間や2時間の延長保育が可能なところもある。

     しかし、当然ながら時間延長には費用負担が伴う。たったの5分、10分の遅れでも“延長”となり、費用が加算されてしまう。

     「お迎え時間ギリギリの時は、駅から猛ダッシュですよ。遅刻しないように必死なんです。多かれ少なかれみんな経験があるんじゃないでしょうか」と食品メーカーに勤務する浅井さんは言う(浅井さんのケースは妻が壊れる! 夫が家事育児に「参戦」した日を参照)

     とはいえ、少しでも遅れそうなら早めに電話を一本入れておくなど、先生とのコミュニケーションは欠かせない。時には小言のひとつも言われることもある。

     電子機器メーカーに務める橋口さん(仮名・35歳)は、「お迎えが遅れると事務所に呼ばれて、ひと言ふた言先生に注意されるんです。それもちょっとプレッシャーなんですよね」と、心情を吐露する。

    送り迎えは堂々とやりたい

     保育園の送り迎えをするために、父親たちは必死だ。