留守家庭の子ども以外でも参加できる「全児童対策」の功罪

―― 学童保育は地域によってかなり体制が異なる場合があると聞きました。

普光院 都市部では、自治体によって、俗に「全児童対策」と呼ばれる放課後事業を行い、そこに学童保育を吸収しているところがあります。

 「全児童対策」は、文字どおり、留守家庭の子どもだけでなく、地域の小学生のために学校施設(主に校庭)を開放した遊び場事業です。

 最近、子どもの遊びの個別化が進み、問題視されていることを考えると、集団で遊ぶ機会を増やそうという遊び場事業の意図はとてもよいのですが、留守家庭の子どもにとっては、喜んでばかりいられない面があります。

 まず、遊び場事業には定員がありません。定員がないと、不特定多数が出入りすることになり、利用者が多い場合には、とても落ち着かない環境になってしまいます。そこに、学童保育を完全一体化してしまうと、留守家庭の子どもには、家庭の代わりとして利用する落ち着いた生活空間がなくなってしまうのです。

 遊び場事業と学童保育が一体化していても、学童保育児のための専用スペースがあり、おやつを食べたり休息したり宿題をしたりできるようになっている場合もあります。学童保育の環境を確保できていれば、遊び場事業と一体的に運営されることには問題はありません。

 中には、学童保育を必要とする子どもも一般児童と全く同じ扱いで、おやつもなければお茶も出ない遊び場事業もあります。普通、学童保育では麦茶などが用意されます。そのような自治体では、家に帰れない留守家庭の子どものために、安心して過ごせる生活の場としての環境を整えてくれるように親たちが訴えているところです。

―― 心配ですね。

普光院 国の基準の検討委員会の報告には、このような一体的運営施設でも、留守家庭の子どもの生活の場として配慮するように書かれています。改善されることを期待しています。

民間学童保育の利用料は月3万~4万円、長期休暇中は6万~7万円に

―― 商業的なサービスもあるということですが、料金はどのくらい掛かるのでしょう?

普光院 学童保育には、放課後児童クラブとして運営されている公立・民間立の施設のほかに、国や自治体の補助を受けない商業的なサービスもあります。このような施設では、月3万~4万円と料金が高く、特に全日保育になる長期休暇中は月に6万~7万円掛かることもあります。

 塾のような内容が中心のサービスもあれば、遊びの時間も大切にして外遊びなどに連れ出してくれるところもあるようです。

 低学年の時代から放課後もずっと勉強では、子どももストレスが溜まりますし、子ども同士の集団遊びが社会性の発達のためにも必要な時期ですので、利用する場合には、毎日の生活がどうなっているのか見て冷静に選ぶことをお勧めします。

(撮影/鈴木愛子)

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