ただ、人事権は会社に認められている権利であり、人事異動そのものが禁止されているわけではありません。多くの会社の育児休業規定には、本人の希望や組織の変更等やむを得ない場合に部署および職務の変更があるという復帰規定があるはずです。

目に見える不利益がない場合は、異動を受け入れざるを得ない

 そのため、育児休業を終えて復帰したときに、本人にとっては不本意な部署への異動だと感じても、会社側がルールに沿った人事異動を発令し、本人と十分な話し合いをし、目に見える不利益がない場合は、受け入れざるを得ないでしょう。また、仕事の内容が大きく変わったとしても、異動先の部署が自宅に近くなるなど、会社が子育てに配慮したことがうかがえる異動であれば、やはり拒否はできないでしょう。

 また、育児休業中に、会社が代替要員を雇用するなどして、原職への復帰が難しいケースもあります。休みに入る前に、人員不足にどう対応するか、原職に復帰できない場合はどのような業務に就くのか、など確認しておくとよいでしょう。

 ただし、異動した結果、異動前の役職から外されたり、通勤時間が大幅に延びたりした場合は、不利益な配置の変更に当たる可能性があり、拒否することができます

 さらに会社が、正社員をパートタイムのような非正規社員とするような労働契約内容の変更を求めたり、降格・減給したり、昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行ったりしたのであれば、はっきりと拒否しましょう

 会社の措置に納得ができず、話し合いでも解決できないときは、都道府県の労働局雇用均等室や連合の「なんでも労働相談ダイヤル(0120-154-052)」に相談して、解決に向けた援助を求めましょう。

ポイント
・会社の育児休業規定に基づいた異動で目に見える不利益がない場合は拒否できない。
・一方的な減給や降格、人事考課での不利益な評価があった場合は相談窓口に相談を。