みなさんこんにちは、家庭教師の西村則康です。日ごろ、お母さん方からたくさんの質問をいただくのですが、その2割ほどは小学1~2年生の親御さんからです。
その多くは、「いつから受験勉強を始めたらいいの?」「塾はいつからどこに行けばいいの?」という、勉強に関するものです。「どんな遊びをさせたらいいか?」「どこに連れていったらいい?」「どんなゲームがいいの?」というようなご質問はほとんどありません。
「どこの塾の低学年コースに通えばいいのか」という受験学習の先取りのご相談が多いのです。ママ友の「○○ちゃんは、1年生から塾に通っているみたい」「2年生で○○ができなければダメみたい」…などの、いろいろな情報に振り回されて、焦ってしまわれるお母さんが多いように感じます。
中学受験をするのであれば、その準備、勉強は早ければ早いほどよいのでしょうか。
能力や学力の発達段階に応じて、早めの準備をすることには賛成ですが、受験学習の前倒しには警鐘を鳴らしたいと思います。
学力には段階があります。基礎学力を鍛えるこの時期に、受験の先取り学習で算数の特殊算などを詰め込むと、「なぜそうなるのか?」という知的疑問を持たずに、ただ公式に当てはめるだけの雑な思考回路を持つ子どもになってしまいます。
前回お話しした、「早期英才教育のほとんどは間違っている」ということにも通じる話です。
大変な受験を先取り学習することで、少しでも子どもに楽をさせてあげたいというお母さんの気持ちもよくわかります。でもそれが逆効果になってはもったいないですよね。そこで今回は「受験の先取り学習は慎重に」というテーマで、低学年時に培うべきこと、そして、受験勉強のスタート対策についてお話していきます。
まず遊びを通して「身体感覚」を身につけよう
学力には次の3段階があります。
1.第1段階:体験知識(基礎イメージ)2.第2段階:基礎知識3.第3段階:応用学習
1.第1段階:体験知識(基礎イメージ)
これは、勉強により身につけるものというより、どちらかというと身体感覚に近いものです。
・「折り紙を半分に折るとちょうど重なる」という対称性の発見・「速く走れば、短い時間で着くことができる」という速さの感覚・「ケーキを奇数個に切り分けるのは難しいな」という割合の感覚
こういった、日常生活のなかで自然に体験する身体感覚(イメージ)が、将来の学習――たとえば「図形の線対称」「速さの理解」「数の性質」を勉強する上で、かけがえのない基礎になります。「あぁ、なるほど!」という納得や、それによって感じる快感は、過去の身体感覚と結びついて初めて湧き上がるものなのです。