「仕事と子育ての両立」―これまではもっぱら女性たちが悩んできたテーマが、今、男性の眼前に迫っている。親も上司も先輩も経験してこなかった境遇。まだ「男は仕事をしてナンボ」の組織の中で働きにくさや孤独感を感じつつ、会社では悩む姿をおくびにも出さず、重圧にも笑顔で耐えている…。

     働きながら子育てをする男性たちの日常、そして滅多にもらさない彼らの汗と涙と笑顔の本音を、書籍『男たちのワークライフバランス』からお届けします。

     今回は、共働きの男性たちが受け持っている家事や育児について、その実態を探っていこう。

     男性がしている家事として多く挙がったのは、「ゴミ出し・掃除」「食事の支度」、育児では「保育園への送り、あるいは迎え」「子どもの世話」などである。

     家事の中でも「食事の支度」については、日常的に行なっている人は少ない。「料理はやっぱり女性につくってほしい」と考えている男性が多いこともあるが、炊事ができる時間に帰ることが困難、というのが最大の理由だ。

     平日の夜は帰宅がたいてい遅いので、夕飯をつくるどころか、家族みんなで食卓を囲むことも難しい。帰宅時間によっては、妻も子どもも寝てしまっている。

    男は朝が勝負

     必然的に、平日の夜は子育てや家事の主力にはなり得ない。従って、男性の場合は家事も育児も朝と週末に集中することになる。

     育児の場合は特に、「子どもの朝の身支度」と「保育園への送り」が多くなる。平日夕方以降の家事と育児は妻に全面的に任せることになるため、「朝だけは俺に任せておけ!」とばかりに頑張る人が多いのだ。

     金融系のベンチャー企業に勤める橘さん(仮名・38歳)もそうした〝朝だけ頑張る派〟である。1歳になる娘の保育園の準備をし、連れていくまでが彼の担当だ。

     まず朝起きてオムツを替え、服を着替えさせ、朝ごはんを食べさせる。その間に自分の用意もしなくてはいけないので、一時間ぐらいはあっという間に過ぎてしまう。

     「ホント、毎朝戦場のようですよ」

     彼の偽らざる心境だ。