仕事があって子どもと一緒にいられる時間が限られるから、家では子どもや家族との時間を大切に過ごしたい――そんな願いを持つDUAL世代は、住まい選びをどのように考えるべきなのか。キーワードは「収納」「子育てによい環境」「家族のコミュニケーション」「家事の負担を減らす」「スマート化」の5つ。これに加えて2015年の相続税改正も視野に入れると、「共働き」視点から重視すべきポイントが見えてくる。住まいを通じて家族のあり方などを研究する積水ハウス総合住宅研究所の河崎由美子課長に聞いた。

収納のカギは3つのクロークにある

 日ごろから住まいに関する多くの悩み事や相談を見聞きしている河崎氏が、住まいづくりの大きなポイントとして着目したのが「収納のあり方」だ。

 収納問題の半分は、どこになにがしまってあるかを探すのに時間がかかることだという。すぐに分かる状態だと、探すストレスがなく精神的にも快適に暮らせる。

 「例えば食器棚に食器がきれいに収まっているように見えても、お皿などが重なっていて奥の方や下の方になにがあるのか分からないようでは望ましい収納とはいえません。家族の全員が、しまった物をすぐに探せる状態が理想的です」

 収納スペースが小さいと、どうしても物を重ねて詰め込んでしまいがちだ。やはりある程度の収納量は必要だろう。

 「だれもが家をスッキリ片づけたいと願っているので、収納はたっぷりほしいと考えます。でも、収納容量を増やすだけではうまくいかない場合もあるんですね。よくあるのが、2階に広い収納部屋はあるけどリビングに収納のないケース。結局、リビングが散らかってしまうので収納家具を置くことになり、スペースが狭くなってしまいがちです」

積水ハウス総合住宅研究所 住生活研究室 ナレッジキャピタルグループの河崎由美子課長。日ごろ、積水ハウスが梅田のグランフロント大阪内に設置した住ムフムラボなどで研究に取り組んでいる
積水ハウス総合住宅研究所 住生活研究室 ナレッジキャピタルグループの河崎由美子課長。日ごろ、積水ハウスが梅田のグランフロント大阪内に設置した住ムフムラボなどで研究に取り組んでいる

 実は収納は量よりも、使う場所の近くに確保することの方が大切になる。そこで河崎氏は、家の中に3つのクロークを確保することを提案した。リビングのクローク(リビクロ)、寝室のクローク(シンクロ)、玄関の靴やベビーカーなどを入れるクローク(シュークロ)の3つだ。

 「私たちはこの3つを『収納3姉妹』と呼んでいます。3つのクロークの中でも、特にリビングのクロークは今までほとんどなかった発想でした。リビングには家族のさまざまな物が集まるので散らかりやすいスペースです。そこでリビングの壁の後ろに0.5~1畳程度の収納スペースをつくり、必要なものをすぐに出し入れできるようにしました。ほんのわずかなスペースを収納に割くことで物がスッキリと片づくのでむしろゆったりとインテリアの映えるリビングが実現します」

 「共働きで子育ても両立させる家族にとって住まいはもっとユーザー目線で機能的に進化した提案が必要な時代」と河崎氏。こうした収納スペースを確保すれば、生活の快適度は格段に向上しそうだ。

積水ハウスの「<a href="http://www.sekisuihouse.co.jp/liaison/27/2012470010/" target="_blank">万博ビエナ展示場</a>」の玄関に設けた「シュークロ」。手洗い用のシンクは汚れを家に入れないための工夫
積水ハウスの「万博ビエナ展示場」の玄関に設けた「シュークロ」。手洗い用のシンクは汚れを家に入れないための工夫

「リビクロ」でインテリアが映える片付くリビングに
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