「子育てによい環境」をいかに実現するか

 家づくりを考えるDUAL世代にとっては、子育ても大きな関心事の一つだろう。河崎氏の日ごろの研究に基づいた提案を展示する積水ハウスの情報発信・研究拠点「住ムフムラボ」(グランフロント大阪4F)には、家族や居心地、生き方をテーマとした15のカテゴリーに関する展示がある。その一つが「子育ち」のコーナーだ。

 「どんな家で育つかは子どもの育ち方にも大きな影響を与えます。例えば自由にモノを描いたり消したりできる壁がリビングにあれば、子どもは外で見てきたことや伝えたいことをそこに描くことで、知性や表現力を養えます。その絵や文字を見て家族が色々なことを話したり、描いたりすることでコミュニケーションも膨らむでしょう。ホワイトボードでもいいのですが、何度描いたり消したりしても汚れないガラス製の『ドラフトウォール』が人気です」

 河崎氏は、住まいの中に子どもの「居ドコロ」を確保することが重要だとも話す。そのためには空間の隅や階段の下など、大人ではなかなか思い付かない場所を生かすのが効果的だという。

 「子どもは隅っこが好きなので、窓辺に腰かけをつくったり、テーブルを置いたりするスペースがあると喜びます。また、階段スペースを広くとるとそこは『居ドコロ』となり、腰かけて本を読んだり遊んだりできます。階段の下に収納を兼ねた隠れ家スペースをつくれば子どもの遊び場が増え、豊かな創造力を育むことにつながるでしょう」

「住ムフムラボ」(大阪市北区、グランフロント大阪4F)内に展示されるガラス製の「ドラフトウォール」。きれいな色味が人気という
「住ムフムラボ」(大阪市北区、グランフロント大阪4F)内に展示されるガラス製の「ドラフトウォール」。きれいな色味が人気という

住ムフムラボ内には広めのカーペット仕様の階段も展示する。本を読んだり遊んだりする場所として提案している
住ムフムラボ内には広めのカーペット仕様の階段も展示する。本を読んだり遊んだりする場所として提案している

「食」から考える家族のコミュニケーション

 家族が集まってコミュニケーションをとる時間や空間を確保することも、住まいづくりのポイントとなる。この点について河崎氏は、「『食』を通じたコミュニケーションが一番」と提案する。

 「家づくりではキッチンセットやリビングを優先して考えることが多く、ダイニングスペースは後回しになりがちです。でも、本当は家族で食卓を囲むときのシーンから考えてほしい。例えばダイニングテーブルが四角いと、大勢で食事をするときにテーブルがもう一つ必要になったりします。丸いテーブルならぎゅっと8人で座ることも可能です。また、窓辺に小さなテーブルを置く工夫やリビングでも床に座ってわいわいと食べたり、色々な食のシーンを考えて食事を楽しむ方法もあると思います」

「住ムフムラボ」内で提案するリビングルーム。真ん中にくぼんだスペースを床座とすることでくつろいだり、家事をしたり用途が広がる。DUAL世代におすすめ」と河崎氏
「住ムフムラボ」内で提案するリビングルーム。真ん中にくぼんだスペースを床座とすることでくつろいだり、家事をしたり用途が広がる。DUAL世代におすすめ」と河崎氏