家の工夫をおさらいできて、集める楽しみもうれしい「幸せのひみつカード」

 「小林さんち。」のハウスツアーも終わりに近づきました。河崎さんは「このおうちには、まだまだ紹介しきれない工夫がたくさん詰まっています。その工夫を皆さんご自身に見つけてもらえるように、こんなカードを作っているんです」と写真のようなカードを紹介しました。

 「これは『幸せのひみつカード』と言ってこのおうちに施された工夫を説明しています。26種類のカードがあって、内容と対応する場所に置いてあるんですよ。興味のあるカードだけを持ち帰ってもらってもいいですし、カードのコンプリートを目指すと、その家の工夫をもれなく知ることができますよ」

助けたり、助けられたり。親との「近居」は住まい選びの大切な要素

 「ところで、」と河崎さん。「子育て世代の住まい選びでは親世帯との距離も考慮したい要素です。子どもが小さいうちは手伝ってもらい、将来的には親を助けるということも、近居なら実現しやすいからです」。城さん一家も、今は城さんの母世帯と同じマンション内で近居をしています。

 「仕事で遅くなる日は子どもを預かってもらい、夕飯を出してもらうなど、協力してもらっています。反対に、親世代が苦手なインターネットの設定や力仕事を手伝うなど、ギブアンドテイクの間柄です」と城さんも近居の良さを実感しています。

 そこで一行は「小林さんち。」の実家にあたる「山本さんち。」へ移動。リタイア後に趣味や地域とのつながりを大切に暮らす、シニア世帯の住まいを見学しました。緑に囲まれた平屋は、リビングが土間になっていて、地域に開かれたつくり。孫が遊べる部屋も用意されています。共働きの暮らしを助ける工夫がつまった「小林さんち」とは対照的に、リラックス感のある「山本さんち。」には「実家らしさ」があふれています。

 「山本さんち」は緑に囲まれた平屋
「山本さんち」は緑に囲まれた平屋

 「自分たちの住まいについて考えるときは、親との関係を改めて見直し、近居も選択肢の一つにするといいですね」(河崎さん)。

 ハウスツアーはこれで終了。城さんに感想を聞いてみました。

 「『小林さんち。』はわが家と似た家族構成。共働きというのも共通していて、自分たちの暮らしを重ね合わせて見学していました。子育て世代や共働きならではの課題を解決する工夫は、どれも取り入れたいことばかりでした。戸建てへの住み替えや近居も含め、今後どんなふうに暮らしていきたいか、ぜひ夫婦で話し合ってみたいと思います

Tomorrow’s Life Museum 関東ってどんなところ?

 「Tomorrow’s Life Museum 関東」は2021年8月にリニューアルした暮らしのミュージアム。7棟のモデルハウスそれぞれには、住んでいる家族の年齢、職業、趣味などが設定され、その人たちが住んでいるようにコーディネートされています。中央の芝生の広場にある大きなツリーハウスは中に入って遊べて子どもたちに大人気。家族で訪れてこれからの暮らしをイメージしたり、家づくりの技術の秘密を学ぶのにぴったりです。

Tomorrow’s Life Museum 関東(積水ハウス)
https://www.sekisuihouse.co.jp/tlm/kanto/
入場無料・完全予約制。茨城県古河市北利根2

河崎由美子
積水ハウス執行役員住生活研究所長、一級建築士
河崎由美子 1987年積水ハウス入社。キッズデザイン、ペット共生、収納、食空間、ユニバーサルデザインなど、暮らしについて研究を続けてきた、住生活提案のプロフェッショナル。キッズデザイン協議会理事副会長。

取材・文/福本千秋 撮影/菊池くらげ