「パートは全員、年収103万円以内を希望していました。ところが日常的に残業をしていると12月末日を待たずにこれを超えてしまいます。といって、最繁忙期に『休みたい』とも言えず、結果的に多くのパートが、サービス残業していました」

 一方、正社員との給与格差についてはこう考える。

 「仕事の違いは『営業の有無』。預金の獲得や、金融商品の販売をするか否かです。もちろん営業は大変だし、少しでも早く帰れたり、子どもの病気や保育園の行事を理由に休めるのは、パートで働く魅力です。でも、それだけで一般職女性の年収はサービス残業で働くパートのほぼ4倍です。正社員とパートの給与格差は大きすぎると感じました」

「正社員にならないか」という打診も受けたけれど

 別居と同時に斉藤さんは、仙台の銀行を退職した。名古屋に戻って仕事を探し、今はまた銀行員として働いている。

 銀行は違っても、窓口の後方支援事務仕事の内容に大差はない。そんななかで、正社員として9年、ほぼフルタイムでのパートとして10年働いてきた。

 20年近くに及ぶ長いキャリアに裏打ちされた、ミスのない安定した仕事ぶりが、会社の目にとまったのだろう。昨年、雇用形態の区別なく「がんばった」人に贈られる社長賞を、支店の推薦を得て受賞した。

 「本社に呼ばれて、式典に出席し、社長から表彰状を手渡されました。その後は役員や人事部長も一緒に、立食パーティで会食です」

 時給は1300円にまで増えている。現在の銀行には正社員登用の道もあり、上司からは「正社員にならないか」と打診もされている。正社員になれば安定し、賞与も出る。それでも斎藤さんは、パートを選んだ。