―― 女性の活用や活躍には、まだ十分に意識が向けられていないということでしょうか?

大沢 そう言わざるを得ません。女性の活用を進めるダイバーシティマネジメントは、「ワークライフバランス」と「活用・活躍支援」の両輪がそろって初めて成立するものです。どちらが欠けてもダメなのです。

子育て中の女性に補佐的業務しか任せないのは「宝の持ち腐れ」

大沢 日本で今問題になっているのは、短時間勤務で働く女性が、将来のキャリアの発展を見込めない部署に配属されるケースが増えていることです。

 これは「マミートラック」と呼ばれるもので、例えば、アメリカで弁護士のようにプロフェッショナルスキルがある女性が、育児中、やむを得ず一時的にパートタイム勤務を選択したために、時間に拘束されない「補助的な案件」が増え、その後のキャリアの発展がそれほど見込めなくなってしまうという問題が起きました。いつまでも補助的な仕事しか任されないため、モチベーションを失ってしまうのです。

 日本の企業でも、同様の現象が起きていると考えられます。

 出産後も仕事を継続しても、やりがいのある仕事を担って、働くインセンティブを高めていかなければ生産性は上がりません。この問題を解決するには、根本的には社員に長時間労働を強いる会社の体質を改めていかなければならないのです。

 また、男女ともに時間当たりの生産性や企業に対する貢献度を評価する人事制度を構築していかなければ、会社としても生産性は上がらず、全体として組織が活性化していきません。時短勤務制度を利用して働くワーママやイクメンの1時間当たりの生産性を、企業は可視化し、正当に評価すべきです。

多様な働き方の実現は、現場の管理職の采配に懸かっている

―― 長時間労働に対する議論はワークライフバランスを考える上で避けては通れません。また、仕事を複数の社員で分担する、ワークシェアリングという仕組みが日本にはなじまないという声も聞こえてきます。

大沢 残業規制に関しては、社員の働き過ぎを規制する動きを政府にも期待したいところです。ワークシェアリングに関して言えば、一人ひとりの仕事の範囲が明確でない日本では難しいと言われる一方で、時間管理をしっかりしている管理職の下では多様な働き方が根付いているといった研究結果があります。管理職がうまく采配することができれば、日本の会社でもできるはずだと考えます。