―― 「日経DUAL」の取材で企業の現場で話を聞くと、「出産を機に辞める女性は確実に減少している」という実態を耳にすることが増えています。一方で、「女性の6割は退職する」というフレーズもちらほら聞こえてきます。この状態を大沢先生はどうお考えでしょうか。

大沢 「6割退社」というのが、誰を対象とした調査で算出されたものなのかを見る必要があります。最近では、妊娠・出産前後の女性社員の就業継続率が100%に近い企業もあるはずです。育児支援制度が用意され、社員がそれを活用しやすい社風が醸成されていれば難しくはない。実際に、就業継続率ほぼ100%の企業は増えていると思います。

 一方、この20年間での大きな変化は非正規社員の急増です。非正規社員でも1年以上の就業期間があれば育児休暇の要求はできますが、実際に取得して就業を継続している非正規社員は多くありません。繰り返しになりますが、今起きている変化は、出産1年前に「常勤」で働いていた女性が、出産後も常勤として働いている確率が高くなっているということです。

―― 正規雇用の女性社員に限って言うと、育休を取得する割合は増えていると断言できるのでしょうか?

大沢 はい、断言できます。女性を戦力と見なし、女性活用が企業戦略として定着している企業であれば、大半の女性は仕事を継続しています。私がここで指摘したいのは、もはや問題は「辞めずに働き続けること」ではないということです。

―― 「辞めずに働き続けること」が問題ではない、とすれば、実際の問題は何なのでしょうか?

大沢 今直視すべきなのは「企業が女性を戦力化できているかどうか」という課題です。

必要なのは、両立支援ではなく、その先の「活用支援」

大沢 もちろん今の日本企業の両立支援には個々の企業や、企業規模による格差があるという未解決の問題はあります。しかし、両立支援が行き届いた大手企業が解決しなければいけないさらに重要な課題が女性の「活用・活躍支援」なのです。

 大手企業の「両立支援」は多岐にわたり、多様なメニューを用意しています。にもかかわらず、「女性を活用する」という視点はまだ不足しています。