「日経DUAL」で日々ワーキングマザーを取材していると、育休を取得する女性社員は右肩上がりに増えていると実感する。だが、その一方で「日本の女性の6割は出産を機に退職する」という数字は依然メディアで伝えられ続けている。

 安倍晋三首相の「ウーマノミクス戦略」提唱で国内の女性活用問題がクローズアップされている今、働くママ&パパを取り巻く環境はどのような影響を受け、今後どのように変化していくのか。「働く女性をデータで読む」シリーズ1回目は、「出産を機に6割の女性が仕事を辞める」の真偽に関して日本女子大学・現代女性キャリア研究所所長である大沢真知子教授に聞いた。

「常勤女性」は辞めなくなっている

―― 楽天などの企業で、育児休暇を取得する社員が急増しています。その一方で「日本では出産を機に6割の女性が退職をする」とも言われますが、実際はどうなのでしょう?

大沢真知子さん(以後、敬称略) 厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」には、出産1年前に常勤の社員だった女性が、子どもを産んでから半年後に就業し続けているかどうかを調べたデータがあります。

 それによると、出産の半年後に仕事を辞めた人の割合は2001年(平成13年)67.4%でした。これに対し、2010年(平成22年)では54.1%。「6割辞める」というのは言い過ぎの感があります。

―― 常勤の女性が辞めずに仕事をし続けるようになった要因として何が考えられますか?

大沢 「次世代育成支援対策推進法」の影響が大きいと思います。2009年4月からは従業員301人以上の企業に、そして、2011年4月からは101人以上の企業にも、企業内の次世代育成状況の調査と行動計画を、各都道府県の労働局に届け出ることが義務付けられています。

 また、同じ年の6月には「育児・介護休業法」の改正案が国会で成立し、2010年6月から従業員101人以上の企業では、3歳未満の子どもがいる被雇用者は、雇用者に対して原則6時間の短時間勤務を請求できるようになりました。それが就業継続にプラスの影響を与えていると思われます。