子どもを持つ親にとって、避けて通れない受験。自分が受験生だったときとは別の心配や不安を体験することになります。子どもが大学受験を終えた今だから分かる受験体験記。母親が専業主婦だったときの中学受験と、フルタイムで働きながら迎えた大学受験と違いとは? そして父親の役割とは?

受験生の親は「見守る」しかないできない

 受験の季節がやってきた。2月初旬の中学受験に始まり、大学入試も本番を迎える。

 親にとって、子どもの受験ほど悩ましいものはない。心配でたまらないが、自分ではどうすることもできない。なかなか本気モードにならない我が子を前にイライラしても、代わりに勉強してやることも、代わりに試験を受けることもできない。わかっちゃいるけど、親ができることなどしれている。見守るしかないのが、もどかしい。

 昨年の今ごろ、私は大学受験を控えた受験生の親だった。

 2人の息子は年子で、兄が浪人したため、2人同時の受験となった。1年前までは気苦労が絶えなかった。なんとか2人とも大学生となり、とにかくほっとした。

 大学受験ともなると、もはや親の言うことを素直に聞く年ではない。食事の後、いつまでもテレビの前から動かない我が子にイラついて、つい余計なひと言を発しようものなら、「今やろうと思っていたところなのに、あー、やる気なくした」などと返され、ますますイライラが募る。

 わが家では、妻との間に暗黙の了解があった。それは2人同時に怒らないこと。イライラの種は同じなので、腹が立つのも同時ということが多いのだが、どちらかが子どもに対して声を荒げ始めたら、もう1人はそれに加わらず、黙っているというのが、いつのまにかルールになった。これは結果的に良かったと思う。おかげで親子間の口論が本格化することは少なかった。

 わが家で頭痛の種だったのが、のんびり屋の長男だ。危機感に乏しいタイプで、ずいぶん気をもんだ。妻も長男をみていて、よく心配になったようで、本人に直接言えない分、その不安のはけ口を私に向けることもあった。

 だが、世間が中学受験シーズンを迎える今頃になると思い出すのは、そんな長男ではなく、次男が引き起こしたある事件のことだ。