想像力を働かせて自由に使える「余白」のある家

一級建築士の小野裕美氏
一級建築士の小野裕美氏

 廊下をなくした広い空間づくりをベースに共働き向けのマンションを考えたのは、一級建築士の小野裕美氏だ。昨年開催され共働き向けをテーマにした、三井不動産レジデンシャルの住空間デザインコンペでデザイン賞受賞作品となった。

 住宅メーカーのプランにしろ、建築家が設計する家にしろ、注文住宅は間取りの自由度が比較的高く、家族が集まるリビング・ダイニングや気配の感じられる吹抜けなどを採用しやすいと言える。一方マンションはというと、まだ一部の取り組みに限られる。ただ、最近では廊下のスペースを小さくし、空間を大きく使う新しい考え方も出てきている

 小野氏が「広がる通りみち」と題してデザインした作品住戸は、室内を寝室と水回りスペースに分け、中央の残りの部分を「通りみち」と位置づけた。といっても単なる廊下ではなく、都市生活の延長のような場所として家族や来訪者が会話や勉強、仕事などができるスペースなのだという。玄関からバルコニーに通じる20畳ほどのそのスペースは風通しや採光が確保され、家族がくつろいでコミュニケーションをとるには適した「みち」に思える。

住空間デザインコンペでは「現代の共働き夫婦の子育て住宅」をテーマに作品を募集したという。写真は小野氏が設計した部屋。廊下がなく、真ん中が「みち」のような空間になっている
住空間デザインコンペでは「現代の共働き夫婦の子育て住宅」をテーマに作品を募集したという。写真は小野氏が設計した部屋。廊下がなく、真ん中が「みち」のような空間になっている

 「今の若い世代は働き方が多様化していて、カフェでノートパソコンを開いて仕事をしている人も多く見かけます。この家の『通りみち』は、家族が思い思いに過ごせる、明るく広々としたカフェのような空間をイメージしました。大きなテーブルを囲んで仕事やおしゃべりをしたり、キッチンで入れたコーヒーをカウンターで受け取ったり、ときにはおじいちゃんやおばあちゃんとパーティーしたりと、想像力を働かせて自由に使える『余白』のスペースなのです」と小野氏。この部屋は今年の夏、埼玉県の三郷市で分譲中の「パークホームズLaLa新三郷」で1戸販売される予定だ。