家族の状況に合わせて変えられる間取りが望ましい

 住宅メーカーのこうした取り組みは今後ますます加速しそうだが、これから家を探す場合、家族がコミュニケーションをとりやすい間取りをどう考えればいいのか。

 「最近の傾向としては、リビングやダイニングをなるべく大きく確保して、家族だけでなく近所の人なども集まりやすくするプランを望むケースが増えています」

 こう語るのは住まいを通じて家族のあり方を研究している空間研究所代表の篠原聡子・日本女子大学教授だ。

空間研究所代表の篠原聡子氏。日本女子大学教授でもある
空間研究所代表の篠原聡子氏。日本女子大学教授でもある

 「子どもは親子という一種の緊張関係だけでなく、隣近所や親戚などいろいろな関係の中で育つことが望ましいので、さまざまな人が集まる空間の存在は重要」という。

 篠原氏が設計したケースでは、1階に15畳程度の「ビッグダイニングキッチン」を設け、そこを中心にすべての居室が見渡せるようにした。廊下はつくらず2階の子ども部屋へはダイニングキッチンを通って上がる動線とし、大きな吹抜けからは2階の様子も分かるため、中学生の長女が帰宅したかどうかも確認できる。

 「廊下を極力つくらないことはリビングやダイニングのスペースを広げるのにも有効です。居室に入るときに廊下ではなくリビング・ダイニングを通る動線にすれば、そこが自然と家族が集まる空間になるでしょう」

ビッグダイニングキッチンを中心に部屋がつながっていると家族の自然なコミュニケーションも生まれやすい
ビッグダイニングキッチンを中心に部屋がつながっていると家族の自然なコミュニケーションも生まれやすい

 また小学校入学前後の1男2女がいる別の共働き世帯のケースでは、リビング・ダイニングだけでなく2階の子ども部屋も大きな空間とし、3人の子どもが一緒に寝起きするスペースとした。子どもたちが成長して個室が必要になったときに備えて、あらかじめ窓は3つ設置している。いざというときには家具や壁で3つに仕切れる工夫だ。

 「子どもが小さいうちは一緒の部屋にすれば、遊ぶときも大きな空間を確保できます。また将来、子どもが独立して夫婦2人になったときも、広い空間があればいろいろな用途に使いやすいでしょう。しっかりとつくられた住宅は人間よりも寿命が長いので、状況に応じて住まい方や間取りを変えられるリダンダンシー(冗長性)も必要です」